【連載】『家めしこそ、最高のごちそうである。』
レシピ②:スーパーで売っている「焼きそばセット」を美味しく食べるすごい秘訣
稀代のジャーナリストが語る、家庭料理の極意。「家めし」の美味しさを追求していったら、答えはシンプルなものへと辿り着いた。今日のレシピは焼きそば。スーパーで売っている「焼きそばセット」を美味しく食べるすごい秘訣。
スーパーで売っている「中華の生麺+焼きそばソース」の袋入りってありますよね。あれと豚肉、野菜などをまず用意します。野菜は何でも、余りもので十分。キャベツやニンジンが定番ですが、わたしは小松菜とかセロリとかグリーンアスパラガスとかズッキーニとか、ときには細切りにしたジャガイモとか、いろんな野菜を入れてしまいます。お肉はあったらあったで脂が出て美味しいけれど、なくても大丈夫。
さてソース焼きそばのたいていの失敗は、麺がべちゃっとしてしまうことですよね。お店で食べる焼きそばはパリッとしているのに、なんでわが家の焼きそばはべっちゃりなんだ! と思う人はけっこう多いのでは。その失敗の最大の原因は、焼きそばの袋に書いてある「作り方」をそのままやっちゃうからなんです。こう書いてある。「まず肉と野菜を炒め、そこに中華麺を入れて、水を50ccぐらい足して炒め、最後にソースをからめます」
こんなやり方でパリッとするわけがありません。100パーセント間違っています。つくり方を全面的に刷新しましょう。
まずテフロンのフライパンを中火にかけます。ここで油は入れません。焼きそばの麺をかたまりのままフライパンに放りこみます。四角いトースト状のまま固まってしまいそうに思えるかもしれませんが、そうなりません。火を通しているうちに、なんと見事なまでに、勝手にほぐれてきます。箸を強引に入れると麺がちょん切れちゃうので、軽く突っつくぐらいの感じでやさしく箸を入れます。
この間に、野菜を切っておきましょう。なるべく細く、せん切りにするのがお勧めです。この理由はあとでわかります。
フライパンの麺に戻ります。焦げるぐらいまでバリバリにさせるのも美味しいですよ。そのあたりは自分の好みで、ほぐれてぱらぱらになったら、いったん麺をお皿などによけておきます。
さて、いよいよ最終の仕上げに。ここからは一気呵成に終わらせるので、具材を手の届くところに全部並べておきます。ぱらぱらになった麺、お肉、せん切りの野菜、焼きそばソース。全部ありますね?
まずフライパンに油を少量加えて熱します。肉を炒め、完全に色が変わってから野菜を投入。ほんの三十秒ぐらい炒めるだけでじゅうぶんです。せん切りにしてあるからすぐ火が通るんですよ。
肉と野菜の上に、麺をどばっと投入。焼きそばソースを上から全体にかけまわします。
あとは箸でからめるだけで完成。驚くほどぱりぱりのソース焼きそばになってるはずです。
できあがった焼きそばに青海苔を散らすと、祭りの縁日風になります。また余裕のある人は、あらかじめ別のフライパンに卵を割り入れてとろ火で温めておき、完成した焼きそばの上に半熟の目玉焼きをそおっとのせると、こってりした美味しさが楽しめます。黄身を崩しながら食べてね。
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佐々木俊尚 作家・ジャーナリスト。 1961年兵庫県生まれ。早稲田大政経学部政治学科中退。毎日新聞社などを経て、フリージャーナリストとしてIT、メディア分野を中心に執筆している。忙しい日々の活動のかたわら、自宅の食事はすべて自分でつくっている。妻はイラストレーター松尾たいこ。「レイヤー化する世界」(NHK出版新書)、「『当事者』の時代」(光文社新書)、「キュレーションの時代」(ちくま新書)など著書多数。
『家めしこそ、最高のごちそうである。』HONZにて集中連載!
第1回 はじめに
第2回 1970年代の家庭料理とは?
第3回 1970年代の外食は、化学物質とまがい物の時代だった!
第4回 外食ブームの陰で家庭料理は
第5回 健康的な食生活はだれでも送れる
第6回 美食でもなく、ファスト食でもなく
第7回 まず最初に、食材から考えること
第8回 「足す」料理と「引く」料理
第9回 【レシピ①】鶏もも肉と白菜だけでつくる究極の水炊き、自家製ポン酢とともに
第10回 【レシピ②】スーパーで売っている「焼きそばセット」を美味しく食べるすごい秘訣
第11回 【レシピ③】見た目も超旨そうになる、絶品キノコ鍋
第12回 【レシピ④】みんなの集まる家呑みで、全員が満足する料理。豪華なちらし寿司。