「ウチは無宗教です」と言う人がいるが、日本は八百万の神達が集まる国であり、初詣は神道、葬式は仏教、結婚式はキリスト教といった調子で宗教のフィールドをうまく住み分けているのが現状だ。
ペンブックスシリーズは茶の湯、神社仏閣、戦国武将など知的好奇心をくすぐられる特集が多いが今回はキリスト教。現在の世界人口は約70億人であるが、その内キリスト教徒の数はローマ・カトリック派が約11.3億、東方正教会が約2.2億、プロテスタント諸教会が約4.6億である。つまり約4人に1人がキリスト教徒という事になる。
『キリスト教とは何か。I』では西洋美術から旧約聖書・新約聖書の世界を読み解く事ができる。当時、識字率が極めて低い社会では絵画が最も有効なメディアであった。「天地創造」など宗教画や彫刻/建築物など造型美術の解説を読んでいくと、次第にヨーロッパ精神史の全体像が浮かび上がる。フルカラー図版入りでの解説は、聖書における系図など、これまで断片的だったカインやアベルなど登場人物が一覧になっており、スッキリと理解できた。
『キリスト教とは何か。II』では十字軍や聖地など歴史に焦点がおかれる。同じ仏教でもタイと日本では寺院の違いがあるように、キリスト教にも建築物には歴然とした違いがある。新しい教皇を決定するコンクラーヴェの内部の様子や、今も厳格に生きる修道士の一日などトピックもユニークで、これからじっくりと読んでいきたい。
また三大一神教が集まる聖地エルサレムの勢力図についても述べており、世界情勢を知る上でも欠かせない。代表の成毛眞ブログにはこの雑誌版があげられていたが、こちらのBOOK版もキリスト教と宗教美術の初心者には買いの本。ヨーロッパ旅行で、美術館や教会を訪れる際にも効力を発揮する。