オリンピックが開幕しました。しかしこの夏も自粛の夏、そして暑い夏となってしまいました。大きなスポーツイベントの最中は本が売れなくなるというのが業界ジンクスになっていますが、今年の夏はどうなるでしょう。
これから出る注目ノンフィクションを紹介していきます。まずは予約ランキングから。2021年7月20日時点の予約受注実績からこの先発売になるタイトルを抽出しノンフィクションの予約ランキングを作成しました。(日販調べ:タイトル・発売日等今後変更になる可能性があります)
注目は『東京の生活史』。
東京にいる人、いた人のインタビューをし、それを本にする「東京の生活史プロジェクト」という企画から生まれた本です。聞き手150人が語り手150人にインタビューするという超大作からは普通の人々の毎日から都市の姿が見えてくるはず。新型コロナウイルスやオリンピックに揺れ動く1年に作られたという意味でも意義のある1冊になるはずです。
出版社 | 商品名 | 著者名 | 発売予定年月日 |
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扶桑社 | 『誰が日本のコロナ禍を悪化させたのか?』 | 牧田 寛 | 20210818 |
講談社 | 『フィボナッチの数学』 | 中村 滋 | 20211014 |
NHK出版 | 『デジタル・ファシズム』 | 堤 未果 | 20210810 |
PHP研究所 | 『覇権から見た世界史の教訓』 | 中西 輝政 | 20210913 |
筑摩書房 | 『東京の生活史』 | 岸 政彦 | 20210823 |
新潮社 | 『楽観論』 | 古市 憲寿 | 20210818 |
朝日新聞出版 | 『私たちはどう生きるかコロナ後の世界を語る2』 | マルクス・ガブリエル | 20210812 |
朝日新聞出版 | 『文豪と感染症100年前のスペイン風邪はどう書かれたのか』 | 永江 朗 | 20210806 |
自由国民社 | 『食べられる草ハンドブック』 | 森 昭彦 | 20210802 |
講談社 | 『辞世の作法』 | 山折 哲雄 | 20210812 |
これから出る本リストから注目作品を紹介していきます。
テクノロジーが進化するにつれ、人間への興味も大きくなってきている気がします。ニーチェならこの現代のテクノロジーをどう読み解くのだろうか。という疑問を解き明かしていくのがこちら。これまで道徳や宗教を題材にしていたニーチェの思考をテクノロジーに当てはめ、昨今アプリやサービスを読み解いていきます。テクノロジー依存になる前に、立ち止まって考えてみては。
稀代の読書家として、刺激的な本を紹介してくれているビル・ゲイツ。今は気候変動に警鐘を鳴らし、地球温暖化に対応するための投資を集中的に行っています。その10年間の取組の成果と、私たちが温暖化に対処するための手立てについて語ったのがこの本。20年ぶりの著作となります。
大きなパンデミックの到来も予測するビル・ゲイツは果たして何を語るのでしょうか。アメリカでは今年2月の発売ですが早くも邦訳版が登場します。
せっかくなので何か学びたいけど、こう暑いと難しい本を読む気にもならないですよね。という時に良さそうなのがこちら。世界史を”酔っぱらい”という観点で読み解きます。サブタイトルにも入っているアレクサンドロス大王は酔っ払って宴会の席で部下を処刑したというエピソードがあるようですし、エリツィンの酔っ払いエピソードも相当なもの(よく大統領出来たなと思いました)。お酒の力を借りたのかどうかは定かではありませんが、そういった歴代の酔っ払いの伝説を楽しみながら夏を過ごしてみませんか。
著者は元モデル研究者。超富裕層のパーティーに潜入取材(?)し、世界のVIPたちが増えすぎて有り余る、可処分所得をどう使っているのか、そして自分の金の使い方についてどう思っているのかを調査したという興味深い作品です。グローバルエリートたちの顕示的消費とその裏で搾取される女性たち。VIPの姿をのぞき見る意味でも楽しめそうな作品です。
ポール・ミルグロムは2020年のノーベル経済学賞に選ばれたスタンフォード大学の教授。新たなオークションの制度設計により通信事業者への周波数割り当てなどこれまでオークションが難しかった分野での競売を可能にしたことが評価されました。この『価格の発見』ではその理論のエッセンスを語ってくれています。これからの社会を組み立てるためにも必須の理論を勉強してみるのにぴったりな一冊。
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ワクチンの接種が進むにつれて、コロナが落ち着いたら…とコロナ後の生活に想いを馳せる機会や会話が増えてきました。動き回らなくても、本を読めば世界の動きは読めてきます。激動の時代にどう生きていくのか、この夏ゆっくり考えてみませんか。