せっかくのゴールデンウィークですが、2年続けて自粛の日々を送る事になってしまいました。こんな時はとにかく読書に限ります。家でじっくり読むというニーズにあわせ「鈍器本」とも呼ばれる500ページ級の分厚い本が売れています。では、4月はどんな本が発売されたのでしょう。
先月出た本の売上ランキングから売場を見ていきましょう。
日販オープンネットワークWINから4月発売のタイトルとHONZのレビュー対象となるノンフィクションジャンルのタイトルを抽出しランキングを作成しています。(2021/4/1~2021/4/30の売上)
HONZでもおなじみ堀内 勉の『読書大全』は20位にランクイン。4位に入った『取材・執筆・推敲』と揃って400ページ超えの大作です。どちらも長いお休みのお供にぴったり。
4月は新刊の新書が良く動きました。中でも注目したいのが『生物はなぜ死ぬのか』です。
昨年以降、『LIFESPAN』や『LIFE SCIENCE』など科学が寿命や老いに挑戦している状況を描いたノンフィクションが非常に話題になっています。一方で、この本は遺伝子には「死のプログラム」が組み込まれており、全ての生き物は「死ぬため」に生まれてくると時話題となっています。あわせて読んで考えてみたい1冊です。
順位 | 出版社名 | 書名 | 著者 |
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1 | 新潮社 | 『どうしても頑張れない人たち』 | 宮口幸治 |
2 | 講談社 | 『生贄探し』 | 中野信子 |
3 | NHK出版 | 『おとなの教養』 | 池上彰 |
4 | ダイヤモンド社 | 『取材・執筆・推敲』 | 古賀史健 |
5 | 小学館 | 『コロナ脳』 | 小林よしのり |
6 | 講談社 | 『生物はなぜ死ぬのか』 | 小林武彦 |
7 | 早川書房 | 『実力も運のうち能力主義は正義か?』 | マイケル・サンデル |
8 | NHK出版 | 『異形のものたち』 | 中野京子 |
9 | PHP研究所 | 『京大おどろきのウイルス学講義』 | 宮沢孝幸 |
10 | 筑摩書房 | 『氏名の誕生』 | 尾脇秀和 |
11 | 中央公論新社 | 『ニッポン未完の民主主義』 | 池上彰 |
12 | 河出書房新社 | 『不機嫌のトリセツ』 | 黒川伊保子 |
13 | 文藝春秋 | 『韓国「反日民族主義」の奈落』 | 呉善花 |
14 | 日経BP | 『あなたが伸びる学び型』 | 古野俊幸 |
15 | 新潮社 | 『自衛隊最高幹部が語る令和の国防』 | 岩田清文 |
16 | 朝日新聞出版 | 『新型格差社会』 | 山田昌弘 |
17 | 宝島社 | 『呪術の日本史』 | 加門七海 |
18 | 新潮社 | 『古代史の正体』 | 関裕二 |
19 | 小学館 | 『稼ぎ続ける力』 | 大前研一 |
20 | 日経BP | 『読書大全』 | 堀内勉 |
他にも気になる新刊がたくさん!4月発売の気になった本をちょっとご紹介。
発売以降、ハイペースで売れています。またも歴史ジャンルから世を揺るがすベストセラーになりそうな期待の作品です。私たちにとって名前は自分だけのかけがいのないものと考えられています。先祖代々大事にされてきたとなんとなく思っていた「名前」ですが、実は明治時代に作られた価値観だったというのです。
確かに、昔の人は「名前」を人生の節目でちょくちょく変えていたり、同じ名前を襲名していたり今とは違った習慣がありました。そういった習慣が消え、今のようになったのはなぜなのか。そのきっかけになったのは「王政復古」だと著者は説きます。夫婦別姓が話題になっている今だからこそ知っておきたい名前の過去。違う景色が見えてくるかもしれません。
著者は『おはよう!ナイスデイ』や『ザ・ノンフィクション』の立ち上に携わったテレビマン。「楽しくなければテレビじゃない」をキャッチフレーズとしたフジテレビ路線とは一線を画し、硬派な番組作りをしてきた裏側を綴った回想録。昨今逆風にさらされているフジテレビの黄金期を過ごした著者は今のメディアをどう見ているのか、テレビメディアのあり方について考えるためも読んでみたい作品。
地球外知的生命、いわゆるエイリアンの存在は『ムー』の範疇かと思っていましたが、科学的にも真剣に研究されています。宇宙の存在がぐっと近づいた昨今、各種仮説は科学技術を用いて検証され始めました。
宇宙科学はもちろん、心理学・人類学・歴史学など各種ジャンルの知見を用いて「彼ら」を考える興味深い1冊です。どこに済んでいるのか、どんな生活をしているのか、私たちは彼らと交信し会うことが出来るのか?子どもの頃一度は考えたであろう「宇宙人」の存在が近くなるはずです。
コロナ禍において、命の選別が話題にのぼるようになりました。こちらは「人の命」の価値について考えた本。テロの犠牲者や死亡事故における賠償金の決め方を通じて、人の命は何かを考える作品です。
命の価値についてはマイケル・サンデル教授の授業でも大きな話題になっていました。果たして、命の価値づけに正しいやり方はあるのでしょうか?
悲劇の探検隊として有名なスコット南極探検隊の隊員が約100年前に書き残した記録から、ペンギンたちの生態を読み解いたノンフィクション。手記はジョージ・マレー・レビックのもので、1911年に南極上陸した際の基地に残されていたものが周辺の氷が溶けたことで近年発見され、話題になりました。レビックは、アデリーペンギンの記録を残していましたが、ペンギンのあまりの奔放な性生活に慄き、その観察については帰国後公開した論文からも削除したのだそうです。ペンギン好き、探検好きならば読んでおきたい1冊。
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どこにも行けない連休ですが、本の中ではどこにでも行けます。充実した読書時間をお過ごしください。