これがノンフィクションであって、HONZの読者世代と重なっているのであろう重要な本である。ということは吉村 博光の熱すぎる説明(というか言い訳?)に譲りましょう。とにかく、発表されたときに「すごい本が出てくるな」と思った人は間違いなくジャンプ黄金期世代。その証拠に、書店店頭での予約も大盛り上がりで、当初想定を超える初版になったとか。
学研の図鑑シリーズにちゃっかり入って読者を待つ『キン肉マン「超人」』はいったい誰に買われているのでしょう。今回のテーマはこちらです。
まずは読者層から見ていきます。
この「超人」には通常版と初回限定ケース版の二種類のバージョンが用意されています。今回は発売日すぐに購入したより熱心な読者に読まれているであろう、初回限定ケース版について見ていきます。
ジャンプ黄金期と言われる1985年~90年あたりに小学生だった世代は今ちょうど40代。まさにその世代に購入されている。という想定どおりの分布となりました。1歳刻みで見ていくと最も多かったのは43歳。43~46歳あたりが非常に多くなっています。40代の親世代は今70代前後と考えられますが、その世代にも購入者が!自分の子育て時代に慣れ親しんだキン肉マンの図鑑を自分で買っているのか、それとも孫に買っているのか、興味深いポイントです。
では、いったいこの読者は他にどんな本を買っているのでしょう。『キン肉マン「超人」』読者が過去1年以内に購入したもの上位を抽出してみました。
銘柄名 | 著訳者名 | 出版社 | |
---|---|---|---|
1 | 『キン肉マン[67]』 | ゆでたまご | 集英社 |
2 | 『キン肉マン[65]』 | ゆでたまご | 集英社 |
3 | 『キン肉マン[66]』 | ゆでたまご | 集英社 |
4 | 『キン肉マン[64]』 | ゆでたまご | 集英社 |
5 | 『ONE PIECE[90]』 | 尾田栄一郎 | 集英社 |
6 | 『ONE PIECE[92]』 | 尾田栄一郎 | 集英社 |
7 | 『ONE PIECE[91]』 | 尾田栄一郎 | 集英社 |
8 | 『週刊プレイボーイ 』 | 集英社 | |
9 | 『キン肉マンジャンプ[vol.2]』 | ゆでたまご | 集英社 |
10 | 『ジョジョリオン[volume 20]』 | 荒木飛呂彦 | 集英社 |
まあ、そりゃそうですよねー。という結果です。
コミックスのキン肉マンは現在新シリーズの連載中で、このリストに出てくる64~67巻は最新刊。もちろん昔のコミックスも現在新装版となり発売中です。
ちょっと見方を変え、今回の購入者が多かった43~46歳がどんなものを読んでいるのかを調査してみました。5月~現在までに購入したものトップ10がこちら
銘柄名 | 著訳者名 | 出版社 | |
---|---|---|---|
1 | 『コロコロコミック 』 | 小学館 | |
2 | 『夏目友人帳 [24]』 | 緑川ゆき | 白泉社 |
3 | 『アルスラーン戦記 [11]』 | 荒川弘 | 講談社 |
4 | 『約束のネバーランド[14]』 | 白井カイウ | 集英社 |
5 | 『ハイキュー!![38] 』 | 古舘春一 | 集英社 |
6 | 『僕のヒーローアカデミア[23]』 | 堀越耕平 | 集英社 |
7 | 『キン肉マン[67] 』 | ゆでたまご | 集英社 |
8 | 『少年ジャンプ』 | 集英社 | |
9 | 『おしりたんてい かいとうとねらわれたはなよめ』 | トロル | ポプラ社 |
10 | 『少年ジャンプ』 | 集英社 |
えーっと… 自分の買い物より、子どものための買い物を優先しているという姿が見えてきました。7位に『キン肉マン』の新刊が入っていますが、自分が夢中になったマンガを子どもと一緒になって読んでいるとしたらなんだか素敵な話です。
それではこの読書リストからHONZ読者にお薦めしたいタイトルをいくつかピックアップ。
昨年末から『メモの魔力』『FACTFULNESS』『父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』…とベストセラーになる本が多く賑やかなビジネス書ジャンル。ここで今ぐんと売上を伸ばしているのがこの『Think clearly』です。いわゆる思考法の本ですが、「学術研究を元にした」というところが昨今の市場に受けているポイントでしょうか。エビデンスの時代です!まだまだここから話題になりそう。今から注目を。
戦前の反省から、教育と政治は距離のあるものでした。しかし最近その流れが変わっています。特に、歴史教科書の採択においては組織的な圧力がかかったり、嫌がらせをされたりといった事が起きているのだそうです。
ギャラクシー賞を受賞したMBSテレビのドキュメンタリーに加筆され、書籍化されたのがこちら。教育現場で何が起きているのかは子を持つ親でなくても知っておきたいテーマ。
経団連会長が社長こそが日本復活の鍵!と訴えます。変革が必要で、新たなテクノロジーとも向き合っていかなければいけないこの時代。トップに求められる資質は何なのかが問われています。若手がきちんと抜擢される会社、社長の候補者として選ばれるには何が必要なのか?など次世代の会社、経営について考える1冊。
「言霊」という言葉をよく聞きますが、確かに悪い言葉に人が縛られてしまうということがあります。今世間を騒がすジェンダーの問題、労働の問題、知らず知らずのうちに私たちを縛っていた「呪い」の言葉からどうやったら解放されるのか。あらがうためにはどうしたらいいのかを教えてくれています。
大人気番組「クレイジージャーニー」に出演する危険地帯ジャーナリストが著者。危険地帯には、日本人には想像もつかないような考え方が残っている、とのこと。そもそも人が人を殺す事にはどんな理由があるのでしょうか。作業だから、縄張りに入ったから…などなど、「悪い奴ら」の頭の中に迫ります。
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「キン肉マン」がテーマだったということで、いつもとはちょっと違った内容になりました。しかし、面白いのは『キン肉マン「超人」』を単行本の出版社の集英社でなく、学研が出版したということでしょうか。一部世代にとっては、キン肉マンのストーリーは読んでいた自分が小さかった頃の想い出とともによみがえるのでしょう。
そして、子どもと一緒に図鑑を広げて楽しむ人も多いのでは。昨年『SLUMDUNK 新装再編版』の発売がコミック売場の勢いに火をつけました。それから一年、メモリアルイヤーにキン肉マンがさらなる盛り上がりを見せてくれることになるのでしょうか。