『ストーカーとの七〇〇日戦争』ストーカーは病気である!
2019年3月、杉並区の保母が自室に侵入されて殺害された。同僚男性が逮捕。
13年10月、三鷹の女子高校生がかつての交際相手にリベンジポルノをされた末、殺害される。
12年11月、逗子の女性が、6年前に交際しストーカー規制法による警告が出された男によって殺害される。
これらは被害者が殺されたことで明るみに出た事件だ。被害者である彼女たちの気持ちは今まで表に出ることはほとんどなかった。
本書は被害当事者が、ストーカー行為の一部始終を赤裸々に語った数少ない本である。一度は信頼した人が変貌していく過程に総毛だつ。
都会から離れ、小豆島に居を移した著者はマッチングサイトで知り合ったAと交際を始めた。しかしAの自分勝手な行動に嫌気がさし、別れを切り出すと、Aは著者に執着した。
海を隔てた町に住んでいるAは小豆島に来て話し合いたいという。拒絶しても執拗な電話やメール、SNSのメッセージが続き、やがて脅迫となった。恐怖を感じた著者は、警察の生活安全課に駆け込んだ。
そこで判明したのは、Aは偽名であり、前科があるということだった。
警察の保護を受けるためには二人の仲について説明し、受け取ったメッセージをすべて読んでもらわなくてはならない。 大人として交際をしていた著者にとって他者に知られることも大きなショックとなる。そんな思いまでして警察の力を借りても接触は止まらない。
ひっそりと家を引っ越し、ペットの山羊を人に預け、息をひそめるように暮らす中、待望の逮捕に漕ぎつける。だが釈放後、さらなるストーキングが始まってしまう。
煙草や薬物、博打などと同じく人への強烈な執着は病気である。治療への手立てが進みつつあるが、本人に病識がなければ、絵にかいた餅だ。
自分の失敗も包み隠さず綴った本書は、同じような境遇の人への心強い参考書となるだろう。(週刊新潮6月13日号より転載)
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著者が参考にした2冊。