さて、小網代の谷を源流から海辺まで歩いて下ったHONZ一行。ちょうど引き潮の時間帯に干潟にたどりついたので、まずは干潟の生き物観察。そして夜は、ゲンジボタルの観察会がひかえています――。
ここで再び、NPO活動中の柳瀬さんにお会いしました。おや、足立が何か見つけたようですよ。
わかりますか? いっぱいいますよ。もうちょっと近づいてみましょう。
あ、カニだ!! それもいっぱいいます。
チゴガニが、はさみを振り上げては振り下ろし、全身で踊り続けています。求愛ダンスだそうですが、これをずっと続けるのは大変そう。
おや、峰尾がたそがれています。
ヤドカリを見ていたそうです。
あれ、こちらも喧嘩でもしたのでしょうか? それとも、
仲尾「あのさ、あのレビュー、そんなに悪くなかったよ。内藤さんは要求レベルが高すぎるんだよ」
刀根「……いいって、もう、気を使ってくれなくっても……」
なんて会話が聞こえてきそうです。でも、
カニを見ていただけです。
そしてこちらは……足立がハマった跡です。踏みどころが悪いと、ずぶっといきます。
柳瀬さんがカニの解説をしてくださいました。小網代には、なんと60種類以上のカニがいるそうです! 海の中から、汽水域、森林性のものまで、カニによって好む環境は違います。多様な環境が凝縮している小網代だからこそ、これほどの多様性が保てるんですね。
眉間にシワが寄っていてスネ毛が毛深いのが、ベンケイガニ。
こちらはカニなのに前に歩く、マメコブシガニ。
そして小網代と言えば! いちばんの人気者、アカテガニです。なぜ人気者なのかというと……
この笑顔!
色は違っても、こちらも笑顔!!
この笑顔!!!
一同メロメロです。同じカニでも、ヘイケガニ(平家蟹)なんて怨念こもりまくり顔ですから、顔(背中ですが)でトクしていますね、アカテガニのみなさん。
ちなみに、こちらが歌川国芳の浮世絵に描かれた、ヘイケガニです……。
これはサンゴの化石。このあたりは昔、サンゴ礁の海だったんですね。
ここまでご覧いただいて、みなさんもお気づきでしょう。小網代は、小笠原諸島や富士山のような傑出した自然景観でもなければ、知床や西表島のように原生的な自然が残る場ではありません。
しかし、東京近郊にありながら、森、流水、草原、湿地、海岸線など、これほど多様な環境が複合的に保全されていることは、やはり驚きに値します。生き物たちは、それぞれに好む環境が違います。ですから、いろいろな環境が合わさった小網代のような場所でこそ、多様な生物相を維持することができるのです。
生き物たちは互いに、強く、ゆるく、結びつきながら生きています。その結びつきが寸断されることなく、これだけの規模の流域がまるごと保全されているのは、関東地方では小網代だけ。まさにオンリーワンの「奇跡の自然」なんですね。
さあ、次はいよいよホタル観察です!(後編へ続く)