きっかけは、5月13日の足立真穂のレビュー『「奇跡の自然」の守り方――三浦半島・小網代の谷から』。本書は「地域の自然保護」という決して派手ではないテーマにもかかわらず、なんと刊行からわずか10日で重版!したそうなのです。
ビジネスとサイエンスが融合した新しい自然保護のあり方を示す内容も素晴らしいのですが、きっと小網代そのものの魅力も読者をひきつけたのではないでしょうか? これはもう、行って確かめるしかないですね。
森から湿地帯、そして海へ――。夜は『「奇跡の自然」の守り方』の著者、岸由二先生&柳瀬博一さんと一緒にゲンジボタルの観察会。久しぶりの活動記は、盛りだくさんの自然観察レポートです!
5月28日土曜日。曇り。品川から電車で1時間半ほど。ここは三浦半島の京浜急行三崎口駅。
参加者は、足立、刀根、仲尾、私・塩田。現地で峰尾が合流予定。が、刀根から「15分遅刻します」の連絡が。そしてこれが「塞翁が馬」。
著者の岸先生と柳瀬さんに駅前でバッタリ。本にサインしていただきました! 刀根が遅刻しなければ、ここではお会いできなかった~。
まずは腹ごしらえのため、タクシーで三崎港へと向かいます。4人いればタクシー代も4分の1、富豪でなくてもタクシーに乗れますね!
港の市場は活気がありました。帰りだったら爆買するところですが、ぐっと我慢。自然と食。どちらも豊かな三浦半島って、魅力的なところなんですね!
お昼はおいしいマグロのづけ丼をいただきました。
そして再び、タクシーで小網代の入口まで移動します。
しばらく走ったところで、窓の外を見ていた刀根が「あ、峰尾……」。みるみる遠ざかる、よれよれと歩く峰尾。明らかに、降りるバス停を間違えています。
森の入口につきました。ここで峰尾を待ちます。
峰尾、到着。やっぱりバスを乗り過ごしてしまったそうです。
さあ、いよいよ出発です。最初は急な階段が続きます。でも、これが「小網代らしさ」。小網代の最大の特徴は「川の源流から海までの自然が寸断されずに保全されていること」、それを可能にした理由の1つがこの高低差なんです。
小網代の源流部は海から1.2㎞しか離れていないのに、標高が80mもあるのです。東京で標高80mといえば、国分寺あたりでしょうか。傾斜が急なので、明治神宮ほどのサイズの場所に、森から海までの多様な自然がぎゅっと凝縮されているんですね。
水をめぐる環境も、流れのある場所や湿地帯など、さまざまです。それぞれの場所を好む生物が、森の中での違う環境を分け合いながら暮らしています。
姿は見えませんが、鳥もいろいろ鳴いていますよ。ウグイス、ヒヨドリ、コゲラ、シジュウカラ、ホトトギス……。
もちろん、虫も鳴いています。鳴かない虫も、いろいろいます。
じつは虫にイマイチ詳しくないので、チョウかガか、ちょっと微妙です。
トンボも何種類かいましたよ。
一見アリに見えますが、よーく見てください。なんと、クモがアリに化けているんですね!
あ、峰尾が何かと戯れています。
……毛虫でした。
仲尾と刀根の視線の先には、アリの行列も続いています。そんな私たちも、誰かに見られている強烈な視線を感じます。振り返ると……
ガン見されていました……。
よく整備された歩きやすい木道が続きます。下はトンネルになっていて、生き物たちも行き来できます。木道がある方が道を外れて歩かないので、自然への負荷も少ないそうです。
森全体によい香りがします。このテイカカズラの花でしょうか?
クワにも実がなっていました。鳥や虫たちにもごちそうですね。
豆のさやのようなものがぶら下がっています。通りすがりの女性が「フジの実ですね!」と教えてくれました。小網代は、自然が好きな人たちが集まる場所なんですね。
「やなぎテラス」に到着です。このあたりはオギという、ススキによく似た背の高いイネ科の草が茂っています。中央線にある「荻窪」駅のオギ、です。
お、仲尾がトンボを狙っています。今晩のおかずにするのでしょうか。
残念! 逃げられました。
さっきよりも開けた湿地帯を進みます。
「えのきテラス」に到着です。後ろに大きなエノキの木があります。
こんなところに寝っ転がって本でも読めたら、最高ですね。
じつは、えのきテラスからは、海が見えるんですよ。森から海へ、下ってきたことが実感できます。
ん? 刀根が双眼鏡をのぞいています。でも、逆からのぞいていることに本人は気が付いているのでしょうか?
海辺でよくみられるハマダイコンの花が咲いています。海はもう、すぐそこです。
あ、ついに干潟に到着です! 今はちょうど、引き潮の時間です。どんな生き物に出会えるのでしょうか、わくわくしますね。(中編へ続く)
岸先生の著書。
柳瀬さんの新刊(共著)。