少し前の話になりますが“CIAがツイッターを開設した”というニュースが流れていました。開始2時間でフォロアーが10万人を超えるなど注目度も高いようです。スノーデン氏による情報リークはCIAがこういった情報開示に向かうきっかけの一つになっているのかもしれません。
惹句に「世界24ヵ国同時刊行! 未公表の最高機密文書、多数収録!」という賑やかな言葉が踊る『暴露―スノーデンが私に託したファイル―』が今月のテーマです。(※レビューはこちら)
まずは読者のクラスタを見てみましょう。
80%弱が男性読者、約40%を50代・60代の男性が占めています。スノーデン氏の問題はテレビなどでもかなり取り上げられておりもう少し女性読者が多いかと想像していました。年齢層は男女とも全体的に高めです。
続いて併読本です。下記は『暴露』読者が2014年1月以降に購入した本のランキングとなります。
RANK | 銘柄名 | 著訳者名 | 出版社 |
1 | 『スノ−デンファイル』 | ル−ク・ハーディン | 日経BP |
2 | 『テレビに映る中国の97%は嘘である』 | 小林 史憲 | 講談社 |
2 | 『約束の海』 | 山崎 豊子 | 新潮社 |
4 | 『絶望の裁判所』 | 瀬木 比呂志 | 講談社 |
4 | 『文藝春秋』 | 文藝春秋 | |
6 | 『英国人記者が見た連合国戦勝史観の虚妄』 | ヘンリー・スコット | 祥伝社 |
6 | 『韓国人による恥韓論』 | シンシアリー | 扶桑社 |
9 | 『資本主義の終焉と歴史の危機』 | 水野 和夫 | 集英社 |
9 | 『女のいない男たち』 | 村上 春樹 | 文藝春秋 |
9 | 『小説外務省』 | 孫崎 享 | 現代書館 |
1位には『スノーデンファイル』が堂々のランクイン。ですが、購入者の重複率は5%にも満たない数字です。発行年月日が近かったので、一緒に購入している人も多いのではないかと予想していましたが、意外に低い数字でした。映画化の話題なども発表されたのであともうひと盛り上げをしていきたいところです。(※編集者の自腹ワンコイン広告はこちら)
それ以外の銘柄を見てみると、外交ものや嫌韓・嫌中本が多くラインナップされているのが特徴です。雑誌では「文藝春秋」本誌が5位にランクインしてきています。アメリカが有していた膨大な機密情報と、それに関連する多くの秘密を内部告発した本書ですが、読者の興味は諜報活動そのものよりも、まずは諸外国の様々な動きにあるようです。
WIN+では『暴露』購入者が買った「著者」ランキングという機能もあります。参考までにこちらでの1位は断トツで「佐藤優」でした。
RANK | 著訳者名 |
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1 | 佐藤 優 |
2 | 副島 隆彦 |
3 | 池井戸 潤 |
4 | 呉 善花 |
5 | 倉山 満 |
外交の裏舞台を知り尽くし、インテリジェンスという言葉を一般的なものにした立役者でもある著者の名前に納得。
それでは、読者の購買履歴をもとにこれから注目したい銘柄を紹介していきます。
佐藤優には及ばなかったものの、併読本の中に孫崎亨という名前が多く見られました。著者は元外務省・国際情報局長、まさに日本のインテリジェンス(諜報)部門のトップという経歴の持ち主でこれまでにも何点かの著書を出版しています。本作はその名のとおり小説で、尖閣問題をフィクションの姿を使って解説した1冊。「小説」だからこそ書ける真実もあるのかもしれません。
ジョン・W・ダワーとガバン・マコーマックという2人の歴史家が、サンフランシスコ講和条約以降の歴史を紐解きながら日本の今後のあり方を提言した提言。外交関連の本と歴史の本は、非常に併読率が高いようです。「今起こっていることを知るためには歴史を知ることが必要」とは良く言われていますが、読者は確実にそれを求めています。外からの視点で今のアジアを見つめ直すための1冊です。
併読されている書籍の中には、ジャーナリズム関連のものもいくつか見受けられます。中でも一番注目を集めていたのが、被災地福島と命を懸けてそれを伝え続けた記者たちの姿を描いたこちらのノンフィクション。未曾有の危機の中、新聞という人々にとってのひとつの命綱を絶やさず守り続けた新聞記者たち。今後もあの震災を忘れず、あのときの教訓を少しでも次の時代に伝えるために、読んでおきたい作品です。(※レビューはこちら)
固めの書籍の併読本にコミックがラインナップされる場合は『ONE PIECE』や『進撃の巨人』など社会現象になっているようなタイトルがほとんどです。本来マンガHONZの範疇になるのでしょうが、発売から比較的時間が短くベストセラーになっているとはいえないこの本が読まれている事に面白さを感じ紹介させていただきました。福島第一原発で廃炉作業を行っている作業員が描いた日々の記録は普段マンガを読まない人々にも確実に届いているようです。(※新刊超速レビューはこちら)
かつて『CIA秘録』で実名証言をもとにその姿を赤裸々にしたティム・ワイナーによるFBI研究書です。著者は”テロリストやスパイに対する秘密諜報こそが、第一の主要任務”だとFBIを定義づけています。この諜報機関の歴史を知ることで『暴露』はより面白く読めるかもしれません。(※レビューはこちら)
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私にとってはNSAやCIAは海外ドラマと映画の中のイメージ(それはそれは色々なイメージがありますが)しかなく、恥ずかしながらイルミナティやフリーメイソンなどの秘密結社の並びの印象です。一方、ミステリーの味付けには欠かせない気になる存在ではあるので、この読者もそういった人々ばかりかと思っていました。正直に告白すると「併読本は海外ミステリ。雑誌はもしかしたら『ムー』じゃないかしら」と考えていたくらいです。
今回の調査を通して、どれだけ重く現実的な問題かを認識させられました。一方、併読本の中にダン・ブラウンやジェフェリー・アーチャーという名前を見つけて同好の士を見つけたような小さな喜びを感じています。
古幡 瑞穂 日販マーケティング本部勤務。これまで、ながらくMDの仕事に携わっており、各種マーケットデータを利用した販売戦略の立案や売場作り提案を行ってきた。本を読むのと、「本が売れている」という話を聞くのが同じくらい好き。本屋大賞の立ち上げにも関わり、現在は本屋大賞実行委員会理事。