『あなたの夫は、息子は、親友は、”ホームレス”ではありませんか?』
僕が考えた、この本のPOPのフレーズだ。
2009年北九州市で、39歳の男性が餓死した。その事件が、本書の取材の端緒となった。39歳の男性が、何故“餓死”したのか。男性は亡くなった時点で、所持金がたったの9円しかなかったという。しかし周囲の誰にも、一切自らの窮状を伝えなかった。
今の三十代は、「助けて」と言えない世代なのではないか。取材を進めていく中で取材班は、そう思うようになっていく。炊き出しに現れる30代のホームレス、自分のことをホームレスとは認めたがらない若者、助けの手を差し伸べてもその手を掴んでこない三十代…。
『いまの三十代は自分でなんとかしなければならない「自己責任」の風潮のなかで育ってきたといえる』
あなたは、どうだろうか?自分が、どうしようもない境遇に陥ってしまった時、周囲の誰かに「助けて」と言えるだろうか?不安定な世の中に生きる僕たちに、「確実な未来」なんて、どこにもない。明日は我が身。読めば、そう強く実感することになるだろう。
一人でも多くの人に届けたい一冊だ。
時々、とんでもない小説に出会うことがある。頭をガツンと殴られるような、心の奥深くをギュッと掴まれるような、僕の価値観を揺さぶるような小説に。
高校という箱庭の中で、純粋に美しいものを追い求める若者たち。どうしようもない切実さに絡め取られた日々は、17歳という箱庭に囚われた世界の中では、逃れようもない重さを持つ。
少女たちよ。僕は君たちに言いたい。自信を持って、輪から離れればいい。確信と共に、孤独を選べばいい。どうせ、大人になれば、みんな、のっぺらぼうの、同じにんげんになってしまうのだから。大人になってしまうことも、今の場所に留まれないことも、決して『絶望』ではないのだから。
僕は基本的に、文庫と新書の担当をしている。ただ時々、「これは!」と思う文芸書があると、担当者から奪って勝手に文庫売り場に置く。久しぶりに、自分でPOPも作った(普段は、文章だけ僕が考えて、POP自体はデザインが得意なスタッフに描いてもらっている)。
日常や自分自身に馴染めないと感じている多くの人に、この作品を届けたい。
『改革開放30周年を記念して、改革開放に功績のあった企業人と企業が北京の釣魚台国賓館で表彰されたのである。この中になんと三枝の緊張した姿があった。わずか30人しか選ばれなかった「最優秀人物」に、外資系でただ一人選ばれたのだ』
イトーヨーカドーの話である。正直、イトーヨーカドーがここまで凄い会社だとは思ってもみなかった。一読して、本書は、「モノを売るすべての人」、そして「部下が一人でもいる上司」すべてが読むべき本だと感じた。
中国でイトーヨーカドーを立ち上げ、育てあげた日本人たちは、それはそれは恐るべき苦労を味わうことになる。「いらっしゃいませ」と言えない店員、盗まれる備品、入荷してこない商品。そして、あらゆる努力を積み重ねても、まったく売れない日々…。そんな中彼らは、這いずりまわるような、泥水をかき集めて飲むような毎日を疾走し続け、ついに「中国で最も成功した外資」と呼ばれる存在となる。その軌跡を描いた作品だ
同じくモノを売る立場にいる人間として、ここまでのことが出来ているのかと自分自身に問いかけ続けながら読んだ。今、なかなかモノが売れない時代になっている。そこには、様々な要因が絡んでいることだろう。しかし、これほどの努力をし、成功した人間がいることを知り、売れない言い訳を探すのは止めよう、と僕は思った。
『栄養について、「これは、どうかな?」と思うものが、雨後の筍のように毎日出てきますが、それをいちいち俎上に載せてはきりがありません。大事なことは、どんなものが出てきても、それを正しく評価できる能力です。』
書店員の僕がこんなことを言ってはいけないのかもしれないけど、正直世の中には、「嘘臭いなぁ」と思ってしまう健康法や健康本が多すぎると思う。タイトルを見ただけで、「そんなわけないだろ」と言いたくなる本も、ある。
本書は、P222から読んでみるのもいいかもしれない。「エッグマン」と呼ばれる驚異的な人物を取り上げて、「結局体のことなんて、人それぞれだしね」というようなことが書かれている。ホント、そう思う。まったく違う二人が、同じことをして健康になれるなんてことを、僕はどうしても信じられない。
帯には、「大体の人は、普通に食べればいいのです」と書かれている。世の中には、嘘だったり怪しかったりする情報が溢れている。自分でそれを見抜く力を、本書を読んで身につけよう。
10年前、学生だった僕は、「働くこと」が怖くて仕方なかった。国立大学の教官だった著者は、僕のように「働くこと」に恐れを抱く若者を、たくさん見てきたという。そんな若者たちに、「自分の思ったとおりの、就職ができなくても、全然悲観するようなことではない」と伝えたくて、本書を執筆したと語る。
『人生のいきがいを仕事の中に見つける必要はどこにもない。もちろん、仕事に見つけることもできるかもしれない。それと同じように、仕事以外にも見つけられる。好きなことをどこかで見つければ良い。どうして仕事の中でそれを探そうとするのか、自問してみよう』
「人は働くために生きているのではない」 森博嗣はそう繰り返し主張する。そう、その通りだ。でもどうしてか僕たちは、そのことを忘れてしまう。仕事の面でその人なりの充実感がないとすれば、それ以外のすべてにおいて満足行く人生でも、悩んでしまう人は多いのではないだろうか。僕は、大学を辞め、人生を半ばドロップアウトすることで、無理やりその呪縛から逃れた。今でも、その判断を後悔してはいない。
僕はこの本を、本書を読むことによって救われるかもしれない人の元へと、どうにか届けたい。人生に苦しんでいるあなた。本書を読めば、自分を縛り付けているのは結局自分自身の思い込みなのだ、ということに気づけるかもしれない。
長江 貴士
1983年、今や世界遺産となった富士山の割と近くで生まれる。毎日どデカい富士山を見ながら学校に通っていたので、富士山を見ても何の感慨も湧かない。「富士宮やきそば」で有名な富士宮も近いのだけど、上京する前は「富士宮やきそば」の存在を知らなかった。
一度行っただけだけど、福島県二本松市東和地区がとても素晴らしいところで、また行きたい。他に行きたいところは、島根県の海士町と、兵庫県の家島。
中原ブックランドTSUTAYA小杉店で文庫と新書を担当。
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