このところあまり面白い読み物に出くわさない。しかたがないので新書コーナーをすこし浚ってみたら、本書を発見した。この本は使える。対象は完全な初心者というよりも、ある程度話すことができる人、英語を使う環境にいる人などであろうか。とりわけネイティブでもないのに、外資系企業に勤めている人にとっては必読書かもしれない。
じつは英語にも丁寧な言い回しや乱暴な言い回しがある。ある程度の英語を話せるようだが、ヒドイ言葉づかいをしている日本人をときどき見かけることがある。英語なんて意味が伝われば良いではないかというのは、ネイティブを上司に持ったことのない人のお話だ。
本書から少し引用してみよう。たとえばオフィスで「ちょっとお話したいことがあるんですが」というときだ。「We need to talk」では「話がある」となってしまう。これは上司が部下にクビを言いわたすときに使うような言い方だ。上司に対するもっとも丁寧は言い方は「Could I have a minute of your time?」だ。もはや「話す」などという単語すらつかわない。本書ではその二つの文例の間に5つの中間的な言い方を例示する。
本書ではこれ以外に「あいづちを打つ」などの簡単な事例から、パーティで「楽しかった」というときの表現、上司からプロジェクトを頼まれて「なんとかします」というときの言い方、「お静かに願います」というようなパブリックへの言葉づかいまで、50余りのシチュエーション別に解説されている。
ちなみに「あいづちを打つ」の項では、最もポジティブから最も愛想のないあいづちまで7段が例示されている。順に「Oh,I see」「Oh,I know」「I see」「Yeah」「I know」「I know that」「Yes,yes」だ。「Oh」をつけるだけでこれだけポジティブの度合いが上がるのだ。英語の不思議でもある。
ところで、部下を叱るときにもっとも軽く叱る例は「Again?」だが、最もきつく叱る例は「You idiot!」だ。ボクもアメリカ人の部下に対して「You idiot!」を使ったことがある。しかし、アメリカ人の上司からは、もっととんでもないことを言われていた記憶がある。まあ、この場は叱るというより喧嘩だから、このような事例は本書にはない。