帯は小山薫堂氏だ。「すべてを手に入れた男こそ、読むべし!これから夢に向かう男も読むべし!料理の腕があがる分だけ。人生はもっと豊かになる。」本書はミシュラン3ツ星シェフによる料理指南書だ。
紹介されているレシピは「鶏のむね肉の炭火焼」「大根のステーキ」「目玉焼き」「オムライス」など材料も手ごろで挑戦できそうなものもあるが、「特上サーロインステーキのたれ焼き」「鶏の贅沢まるごと煮」「鯛の鹿の子造り」など、なんとなく二の足を踏みそうなものもある。しかし、普通の男が料理を作るのはハレの日が多いはずだから、この位のものが良いのかもしれない。
すべてのレシピには山口規子の美しい完成写真が添えられている。食器は「竹のすのこ」や「ざる」など手ごろなものがほとんどだが、親子丼には魯山人の日月椀が使われているようだ。実際に出てくると、手が震えてしまうだろう。京都門前の骨董店でその値段を聞いて仰天したことがある。
料理はシェフの人柄をあらわすと思う。嵐山吉兆の料理は優しい料理だ。徳岡シェフは作品を作るというよりも、ゲストに満足してもらうことのほうに力点があるように思う。じつは先々週イギリスのコッツウォルズにあるマナーハウスに2泊した。シェフは2つ星という触れ込みだったからだ。出てきた料理はすべて塩辛くて不味い。料理を判るように残したうえで、その旨をウエイターに言ったのだが、2日間まったく変化はなかった。つくづくこの国は食文化に関心がないのだと呆れた。
徳岡シェフの優しさは文面からもなんとなく伝わってくる。「(たれは)フツフツと煮ます」「(マスタードは)ちょんちょんと乗せます」「(小石は熱湯で)ぼこぼこさせながら温めます」
ちなみに「目玉焼き」は蒸し料理に分類されている。「大根のステーキ」は煮物だ。この中から今晩は「パルミジャーノの茶椀蒸し」を作ってみようかと思っている。