帯に「英語自慢の鼻をへし折る!」とある。以前から単語こそが英語において最重要であると主張してきた評者だが、この本を読んでみて、それは言いすぎだった反省した。まさに鼻をへし折られた。
外資系IT会社に勤務している間は、英語といってもいわゆるビジネス英会話と日常会話、メールだけで暮らしていけた。会話では理解が怪しい場合は、聞き返せすことができた。こちらがあいまいに理解していそうだと、むしろ相手が言い換えてくれたものだ。メールはそもそも長く書くのが面倒なので、ネイティブも明確・簡潔に書いてくる。つまり、正確に訳をする必要のない英語を使っていたのだ。
帯の例文は「I waited for fifteen minutes – they seemed as many hours to me.」だ。本書では基礎編に分類されている文だ。これにひっかかった。ビジネスシーンではめったに使われることはない用例なのだが、悔しいの一言に尽きる。
一方でビジネスシーンでよく使われる例文もある。「I couldn’t possibly persuade Fred.」などだ。じつは企業間取引の現場では、英語のほうが日本語よりもより丁寧であることが多い。「契約条件に満足ですか?」などとはめったに聞かない。「もしよければ、この契約についての考えを教えてくれませんか?」などとなる。より間接的であり、仮定的なのだ。それゆえに、この例文とはことなる用法とはいえ、couldやmightを会話で多用することになる。
本書には「Return to your work, and that immidiately.」という例文が載っている。もし、実際にこう言われたら、上司はかなり怒っている。「Return to your work immidiately.」のほうがましだが、それでも怖い。普通は「You better back to work.」ぐらいであろう。
本書は学生の英語学習用としても使えるが、ある程度英語を使える人にとっては上質な英語クイズでもある。例文は短いとはいえ翻訳文がすばらしいので、本当に参考になる。英語に興味のある人にとっては買いだ。1000円以上の価値は間違いなくある。