年末恒例の”来年こそはシリーズ”の中で買ったものなのだが、年が変わると気も変わるもので、すっかり放り出しそうになっていた一冊。まあ人間には、向き不向きというものがありますからね。
しかし本書を少し読み始めると、自分の走る走らないはさておき、十分に楽しめる一冊であるということが分かった。古今東西の「走り」の歴史が一望できる、壮大な文化人類史となっている。
なぜ人は走るのか?その目的としては、古代のインカ帝国、中央ヨーロッパ、中国やインドなどに見られる伝令システムとしての役割や、古代ギリシャ、ローマなどに見られる競技としての役割などが挙げられている。
しかし最も興味深いのは、古代の時点で既に、現代と同じように自分自身の鍛錬を目的として走る人達が存在していたということである。ローマ帝国ストア派哲学者セネカはランニングを哲学の発想の源に置いていたというし、日本の霊峰、比叡山にも俗に“マラソン僧侶“として知られる修行僧の一団などが存在している。
その他、初期の箱根駅伝に関する牧歌的なエピソードなども面白い。まあ、読んでる暇あったら走れよって話なんですけどね。ほんとに。