新学期が始まりました。考えてみたら昨年の4月はまだまだコロナ禍の中。4月特有の電車や会社の混み方を見て、コロナ前が戻ってきたことを感じています。この時期は対人関係やコミュニケーション、人の心の動きに関する本が手に取られる時期でもあります。そんな季節にぴったりな1冊が登場しています。
それが『夢を叶えるために脳はある』
『進化しすぎた脳』などで話題になった池谷裕二さんのシリーズ第3作。高校生への脳講義ということで、手の取りやすさでも人気でした。AI全盛の世だからこそ、自分の脳についても改めて考えてみたいですね。
それでは、この他3月新刊から気になる本を何点か紹介していきます。
この時期に限ったことではないのですが、なんで働かなきゃならないのか…と考える事はありませんか?
ため息つきながらそんなことを考えていたらこの本の惹句「ヒトは働かずにはいられない!」という文字が目に飛び込んできました。仕事ってなんなの?という問いがある一方で、人生の意味や協力の喜びなどは私たちのDNAに組み込まれている、とこの本はうたっています。だとすると、何も仕事をしない、ということは私たちにとって幸せをもたらすことなのでしょうか。壮大な人類の労働史に新たな生きがいを見つけることは出来るのでしょうか!?
しれっとノンフィクションとして紹介しようとしていますが、これをノンフィクションと呼んでいいのかどうか… シャーロック・ホームズの小説に胸を躍らせた経験がある人であればきっとこの「バリツ」という護身術を目にしたことがあるはずです。そして「バリツ」とは、謎に包まれた正体のわからない武術でもありました。
その幻の護身術を本で解説するということに挑んだのがこちら。読んだらきっとモーリアティ教授との決闘を読み直したくなるはずです。
今、「本」をアクセシブルなかたちで届けるという取組みが急激に動いています。読書バリアフリーということを考える上でも大事なのが「読み方の多様性」です。この本ではまさにそんな多様な読み方をする人たちをとりあげ、その方々の読み方をひもといています。
本の中では難読症・ディスレクシア、過読症・ハイパーレクシア、失読症・アレクシア、共感覚・シナスタジア、といった多様なケースをとりあげています。文字を読むことの多様性について考える人必読の1冊。
もともとヒトラーの護衛に過ぎなかった親衛隊。それが歴史を経るにつれ、権限を持ち、強制収容所の創設や大量殺戮を行う組織となっていきます。ヒトラーに最も忠実だった犯罪的組織となった「政治的エリート」たちは果たしてどのように選抜され、過激になっていったのでしょうか。そして戦後、その構成員たちはどのように処遇されているのでしょう。そういった狂信的な組織の全貌を明らかにした話題の新書です。
科学、歴史ジャンルからはこちらを。最近話題のビッグヒストリージャンルの1冊。これは宇宙の誕生から現在~未来までを一つの歴史として捉えて俯瞰する新しい歴史の見方です。
このため、本書でも人間が出現するのはなんと第8章!そして11章ではすでに未来について語る、という本当に壮大な時間軸の歴史本です。大人になってから改めて歴史を勉強したい、でも何を読めば…という方にはぜひとも手に取ってみていただきたい1冊。
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今、書店の閉店が大きなニュースになっています。たしかにネット書店で本を取り寄せることが日常になっている方も多いでしょう。ただ、一方で自分の原風景や子どもの頃の思い出に「本屋さん」の記憶を持っている人も、そこで出会った本の思い出を持つ人もそれ以上に多いのではないかと思います。
『本屋のない人生なんて』は、こういった世で「本屋」という道を切り拓いている店主たちのノンフィクションです。本、そして本屋さんを大好きな人たちに話題となっている1冊。全国各地の本屋めぐりのお供にもなるはずです。今月のラストはこの本で締めようと思います。