新型コロナ感染症の五類移行からそろそろ1年になろうとしています。街中に多くの旅行者の姿を見るようになりましたが、ノンフィクションについても、人や事件の動きを追うルポルタージュや海外での取材や研究成果が増えてきた気がします。『バッタを倒すぜアフリカで』もそういった1冊。
前作『バッタを倒しにアフリカへ』は25万部突破のベストセラーとなり、新書大賞を受賞した作品です。食糧危機の原因となるバッタ、その対応のために立ち上がった研究者の物語は、表紙写真のあまりのインパクトともに大きな話題となりました。続編ではどんな研究成果が見られるのでしょう。
このほか4月発売予定の新刊から、いくつか紹介していきます。
2022年にNHKで「正義の行方~飯塚事件30年後の迷宮~」というドキュメンタリーが放送さ、後に映画化され大きな話題を呼びました。この作品を書籍化したのがこちら。「飯塚事件」と名付けられた女児誘拐、殺害事件は難航した捜査の結果、DNA鑑定を元に失踪現場近くに住む久間三千年の逮捕にたどり着きます。しかし、証拠はすべて弱く、本人は否認したままの状態で再審請求準備中に死刑執行。果たして本当に犯人だったのか、DNA型鑑定は信用できるのか…この事件に関係した様々な人物に取材を重ね、それぞれの「正義」から事件を浮かび上がらせます。まさに『藪の中』のような作品。
まずタイトルが良いです。『空想科学読本』からこちら、科学と空想はとても近いところにあるのです。いるかもしれないし、いないかもしれない。地球に侵略してくるかもしれないし、自転車のカゴに乗って走ってくれるかもしれない。想像の世界で様々な形で具現化されているエイリアンの姿を、動物学者の視点で考えたのがこちら。地球外に生まれた場合、どういった姿形で、どう進化していくのか。ということを様々な理論をベースに作り上げています。私たち人類が生き延びていくための進化の方法の提示にもなっているのかもしれません。どんな姿か気になりませんか?
先のノーベル平和賞を受賞した、ナルゲス・モハンマディ氏。イランで長年にわたって女性の権利擁護や死刑制度の廃止などを訴える活動をしてきた人権活動家です。そして今まさに服役中でもあります。彼女の「戦いの記録」が緊急翻訳出版されるそうです。
イランの刑務所で行われている思想犯への拷問を、実際に刑務所内の女性たちへのインタビューを通じて明らかにしていきます。むち打ちや、セクハラ、家族への脅迫、そういったものに加えて日常的に行われているのが「白い拷問」。これは感覚遮断による拷問で、これにより囚人たちは心と体の健康を病んでいくそうです。世界に向けた告発の書。
投資熱衰えぬ昨今。株価や為替の一挙一動に注目をしている人も増えてきているのでは。こんな時だからこそ振り返っておきたいのが「歴史」。原著『The Price of Time』は22年に発売され、経済学関連書としての高い評価を受けた1冊です。5,000年に及ぶ経済思想のバトルを踏まえて見た現代の金融政策の評価とは。600ページという大作ですが、チェック必須の作品でしょう。
先日、コーヒーの国内消費量が久しぶりに増加したというニュースを見ました。コロナ禍での人流抑制、そこからの恢復はコーヒーの消費にも大きな影響を与えたようです。
一方、生産農家の利益をきちんと確保する、ということが世界的な課題にもなっています。スペシャルティコーヒーはそういった過程を管理された高品質なコーヒー。コーヒーにまつわる経済システムの課題と現状が語られているのがこちら。持続可能なコーヒー供給にはどんな価格付けをすればいいのか。毎日飲むコーヒーの価値を見直したくなる作品です。
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このほかにも、能登半島地震の検証や西鉄バスジャック事件の読み直し、年金問題や海外臓器売買などなど、様々なルポルタージュが刊行されていくようです。雑誌や新聞、本のジャーナリズムの力について考えるきっかけにもなりそうな4月。良い本との出会いがありますように。