まいどお世話になっております、HONZレビュアーの仲野でございます。このたび、『仲野教授の この座右の銘が効く』という本を上梓いたしました。その経緯を、本の中ほどにコラム「この本ができるまで」として書きました。発刊プロモーションとして、ここに掲載いたしまする。いや、ホンマにおもろうて役に立つ本ですから、みなさんよろしく!
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新型コロナウイルスが中国で広がり始めたころ、令和元年の秋の話です。『ドクターズマガジン』という業界誌から、なんでもええから連載エッセイを企画してくれと頼まれました。「丸投げ企画」というやつです。なんで医学部教授にそんな依頼がくるんやと思われるかもしれませんが、たぶん、『こわいもの知らずの病理学講義』(晶文社)のような医学に関係するものだけでなく、『仲野教授の そろそろ大阪の話をしよう』(ちいさいミシマ社)のような仕事とはまったく関係のない本まで、一般向けの本を何冊か出していたからでしょう。
一生懸命に考えました。で、思いついたのは、えらそうにも、自分の座右の銘を紹介しようというものです。毎回、座右の銘をひとつずつと、どうしてそれを座右の銘にしてるのかという解説です。ちょっと考えてみてください。座右の銘というのは、それほどたくさんあったらおかしいでしょう。なので、最初は、「座右の銘は銘々に」というタイトルで六回、月刊誌なので半年の連載として開始しました。
ところが、あまりに好評で、ぜひ続けてほしいということになりました。「好評」というのは自分で勝手に言うてるんじゃなくて、編集部からそう言われたのです、念のため。もちろん、おべんちゃらをかまされたという可能性は否定できません。が、半年の休載をはさんで「座右の銘は銘々に リターンズ」としてさらに九回を連載することになったのですから、たぶん真実です。こうして結局、トータルで一五回の連載になりました。さすがにそれ以上は多すぎるやろ、ということで、惜しまれながらも(これはあくまでも主観です)連載は終了させてもらうことにしました。
これまでに二冊の本でお世話になったミシマ社の編集者・野﨑敬乃さんに、大絶賛を受けたこんなおもろい連載をやったんですけど、本になる可能性はありますやろかと、自己肯定感いっぱいのメールを送りました。折り返し、むっちゃおもろいです、ぜひ! との返事が来ました。しかし、なにぶんにも字数が足りません。今ある量の倍は必要ですということで、書き足すことにあいなりました。
とはいえ、先にいったような理由です。自分の座右の銘はすでにほぼ使い尽くしています。はたと困りました。が、ええことを思いつきました! 世の中にはさまざまな座右の銘があふれています。中には、なんやねんそれは、とツッコミをいれたくなるものもあるはずやないですか。
次はそれや! ということで、さらなる続編として、「仲野教授の こんな座右の銘は好かん!」シリーズ計一五回をウェブの「みんなのミシマガジン」に連載することになりました。それも大好評を博すことになったのです。これも自分で言うてるんじゃなくて、ミシマ社からの報告であることを申し添えておきます。
こういった経緯からの本なので、体裁をどうするか、すこし悩ましいところがありました。結局は、相談の上、できるだけ連載時のままでいくことに。大好評(↑しつこい)連載の勢いを維持しようというのがいちばんの理由です。ただ、現役時代に書いた文章などは今となってはそぐわないところもあるので、そういったあたりはちょっと手を加えてあります。
前半の一五回─このコラムまでの一五編─は雑誌連載だったので字数制限があり、およそ一七〇〇字程度です。それに対して後半の一五回はネット連載で字数が自由だったので、だいぶ長めになっています。不釣り合いやないか、と思われるかもしれませんが、前半は褒め称えるための意義説明であるのに対して、後半は、なんやねんこの座右の銘はというツッコミなので、十分に語るにはそれだけの字数が必要だったということもあります。なので、前後半でちょっとテイストも違うかもしれません。まぁ、そこは何卒ご寛恕のほど。
単行本にするにあたり、驚いたことがあります。最初に書いたものは四年以上も前のものですから、すでに記憶の彼方となり、すっかり忘れてしまっていました。そこへ、「通して読んだらめっちゃおもしろかったです! しかもすごく学びました」という野﨑さんのメモのついた初稿が送られてきました。うまいこと言うて、またお世辞をと思いました。自己肯定感は強いけど、疑り深い性格でもあるのです。ところが、読み直してみたら、あら不思議、自分でもまったく同じことを感じてしまいました。
ここまでお読みになられていかがでしたでしょう。きっとあなたも同じ感想を抱かれるはずです。かどうかは保証の限りではありませんが、ご同意いただける方は、そのままお読み続けください。そうでもない方は、ここからはむっちゃおもろくなるはずと気を取り直して、あるいは、自らをそう思い込ませて読み進めてください。
これまでに出した中でいちばん売れた本、八万部近くまでいきました。自分でもどうして売れたのかはよくわからず…
ミシマ社の『仲野教授の』シリーズ(そんなんあるんか…)、第一弾。大阪をめぐって、いろんな人たちと対談をしとります。
ミシマ社の『仲野教授の』シリーズ(たぶんある)、第二弾。爆笑エッセイ集です。