冬はどこに行っちゃったの!と言いたくなるような暖かい日が続く2月でした。新学期に向けて、いろいろなジャンルで動きが激しくなってきています。特に投資をめぐる動きは非常に大きく、バブル超えの日経平均や新NISAへの流入などが連日ニュースとして報じられています。とすると気になってくるのが株式市場を支える側の人たちの姿。ということで、今回最初に注目したのが金融ノンフィクションの『TRILLIONS(トリリオンズ)』。
耳にすることの多くなったインデックス・ファンドですが、世界の金融の姿を大きく変えた彼らには多くの物語があったようです。この開発や革命を担った人たち、運用成績で勝つのは誰なのか。巨大資本の動きの裏にあった人間劇場を描いたノンフィクション。
それでは、この他2月新刊から気になる本を何点か紹介していきます。
お金については中公新書から興味深い作品が出ています。三井が日本初の民間銀行を創業していくことの礎になったのが、この「三井大坂両替店」です。単なる歴史を振り返るのではなく、興味深いのが「道楽者のその顧客に、金を貸せるか?」というオビの一文でしょう。江戸時代と聞いたら、ドラマを見ていても落語を聞いても、金を借りてでも遊んでしまう若旦那とかがいっぱい出てくるわけで、いまとは倫理観も大きく異なっていたはず。その時代にどうやって信用調査をしていたのか、その技法が資料から明らかになっているとのこと。気になります。
企業モノ?としてはもう1点。このコーナーでも毎度大人気の「日記シリーズ」最新刊が発売されました。今回は「電通」。これまでこのシリーズといえば、『交通誘導員ヨレヨレ日記』にはじまり、老後でも社会を支える方々が見た人間ドラマを描いてきました。バス運転手、介護職員、コンビニ店員…となじみのある仕事ばかり。そんなシリーズで、ぼろぼろとはいえ、天下の電通ですよ(しかも今回は社名入り)。名前は聞くけれど違う世界に住んでいる感もある電通社員の話は人々にどう刺さってくるのか。そして、広告代理店を目指す若者たちの心にどう刺さるのか、興味深い1冊です。
AIがあれば、語学力なんていらないのでは… そんな問いかけがあります。確かに、最近の翻訳ツールの進化はめざましく、もっともAIが活躍する分野のひとつといってもいいかもしれません。だからこそ、翻訳に人間が介在する重要性や必要性について考えなければならないのかもしれません。
長い人類の歴史の中で、翻訳者や通訳者が果たしてきた仕事は様々です。タイトルのとおり、まさに多くの命に関わるような局面にも。これまでの歴史を振り返りつつ、これからを考える1冊。
恥ずかしながら、この本の出版を通して初めて村上一枝さんという方の存在を知りました。48歳まで小児歯科の開業医だった村上さんは、マリ共和国に単身渡航し30余年にわたるボランティア生活に身を投じることになります。まさにゼロからの出発。支援団体を立ち上げ、マリの人々と自立支援活動を行ってきた村上さんの考えていたことはなんだったのか。
彼女がもたらしたモノは自立。教育を行うことで識字率があがり、安全に子どもを産む環境を整え、女性の生活改善にも大きく寄与してきたようです。初の著書。注目です。
過去の戦争においては、様々な英雄の話が語られています。この本はアフガン戦争勃発の翌年、2002年に起こった事件を描いたモノ。満身創痍で、援軍もないなか、無数のアルカイーダ兵に囲まれた曹長が、23人の米軍兵を救出した実話です。ヘリから転落した仲間を、敵地の真ん中に助けに行った米国兵の記録。原著は「Alone at Dawn」で、映画化の話も出ているという話題作です。
著作権や本にまつわる法律などに関する本の出版も目立ちました。また、様々な法令が動き出す中で、法と人間の関係について考える本というのも増えてきています。
*
未曾有の株高、これはいつまで続くのか、これから先何が起こるのか。こういったことを考えるための素材も本の中に。ためになる本との出会いがありますように。