芥川賞・直木賞が決定し、本屋大賞のノミネート作品も発表。1月は小説の売れ行きがよい1ヶ月となりました。また、新NISAのスタートも相まってか、お金や投資に関する本がよく動いているようです。ではノンフィクションではどんな本が登場しているのでしょうか。
大きな話題となったのが、映画化の原案としても話題の『オッペンハイマー』でしょう。米国で公開された映画の日本公開が3月に決まり、以前刊行されていた作品が文庫になって再登場しました。上中下巻の3冊での登場です。
原爆の父と言われた物理学者がどんな人生を送ったのでしょうか。
それでは、この他1月新刊から気になる本を何点か紹介していきます。
原爆つながりでは、こんな本が刊行されています。オッペンハイマーが核開発を行っていたその施設に潜入したスパイを描いたノンフィクション。彼の存在があったから、ソ連が短期間で原爆開発をできたのだと言います。デルマーというコードネームの彼は、最高機密取り扱い資格を得て「マンハッタン計画」に潜入します。
入手した情報を逐一モスクワに報告していたそのスパイをFBIが特定したのは米国を去った数年後。まさにジョン・ル・カレの小説に出てくるようなスパイの姿を実話の中に見ることができそうです。
12月に“東京都がマッチングアプリの提供を開始”というニュースが流れ、度肝を抜かれました。ある調査では、20代の出会いの25%弱がマッチングアプリなどのサービスによるものになっているという話もありました。もはや一大出会いインフラなのですね。
元々、メッセージでやりとりをするところからスタートするこの出会い。人を見抜くには、メッセージ文から多くの情報を得なければなりません。この著者は「メッセージ文解釈の達人」だそうで、メッセージ文からのコミュニケーション術を教えてくれています。恋愛に限らず、仕事上の人分析にも使えそうな1冊。
寒中水泳とか火の上を歩くとかという話題に触れると。いったいなにが楽しくて・・・ と思ってしまうのですが、人によってはそれが「快楽」に変換されるようです。人が意図的に「苦痛」を選ぶには相応の理由があるようです。
人は「いい気持ちになるために意図的に苦しいことをする」ということを戦術的に用いてきました。なぜそんなことが始まったのか、そもそも痛みとは何なのか「マゾヒズム」を真剣に考えたノンフィクション。
最近、サスティナビリティを測定しそれを評価する。という世界的な動きについての話を伺いました。何事も評価基準というのを作り世界基準となったものは大きな力を持つようになる、というお話です。計測というのは権威につながるものなのだな…と思っていたところに飛び込んできたのがこの本の表紙でした。
精緻な計測があったからこそ発展し、栄えてきた文明があります。一方で、計測基準を決めるためには至る所で大きな争いもありました。土地の計測なんてのは、大なり小なり未だ揉め事の原因ともなりますし。計測を科学的、歴史的な視点からみていきます。
12月に『ゴキブリ・マイウェイ』という本が出て、1月にこれが出て… なんだかゴキブリ界隈がアツいです。それはもしかしてこれから大きな気候変動が起きても、大絶滅期がやってきても「ゴキブリは生き延びるだろう」
という学術的な興味が高まっている証拠なのでしょうか。こちらは数多くのゴキブリ研究本を執筆している研究者がゴキブリ好きに目覚めて、日本や世界を旅することになった、というサイエンスエッセイ。
この項を書くために開いたAmazonのページには、でかでかと殺虫剤の広告が出てきて、なんだかちょっと切ない気持ちになっています。
アメリカが選挙の年を迎えました。そこで思い出しておきたいのが前回の「不正選挙」を巡る一連の事件。不正選挙が行われたという陰謀論はどこから生まれ、どう拡散されていったのか。結果、連邦議会の議事堂襲撃という衝撃的な事件につながることになります。
「Qアノン」と呼ばれる人たちの根源から、拡大、現在までを追ったノンフィクション。
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全国指名手配犯として、誰もが一度は目にしていた「桐島聡」を名乗る男性が突如現れ、そのまま亡くなったというのも1月のニュースでした。半世紀前に起こった連続企業爆破事件から50年の逃亡劇。その裏側や人生を知りたいと動いている書き手も多いのではないかと思っています。ノンフィクションの刊行はあるのでしょうか?非常に気になっています。