2023年もあと残すところ1ヶ月となりました。毎年恒例のベストセラーランキングなども発表され、一挙に年末モードが盛り上がって来ました。
今回の先月出た本は『夜明けを待つ』をまずご紹介します。『紙つなげ!』など数々のノンフィクションを送り出して来た佐々涼子さんの『夜明けを待つ』が発売されています。
実は、この本“これから出る本”でも紹介するかどうかを悩んだ1冊でした。商品紹介にエッセイとあったので紹介をためらったことを後悔しています。読んでみてわかったことは「これは“佐々涼子”という一人の人間の人生を描いた壮大なノンフィクションだ」ということ。“死”と向かい合いながら、生きる意味を考え続けた佐々さんの作家としての生き様を受け取ってください。
それでは、この他11月新刊から注目した本いくつかを紹介していきます。
前著『モサド・ファイル』も大きな話題になりました。
中東問題の裏で暗躍するイスラエルの諜報機関「モサド」にはモサド・アマゾンと呼ばれる女性諜報員がいるそうです。彼女たちの知られざる実態を描いた作品。彼女たちの生まれや育ち、なぜこの活動に身を投じたのか、苦悩などなど関係者の証言をもとに明かした秘録。今こそ読むべき作品でしょう。前著とあわせて読んでみては。
12月~1月は未来予測本が非常に動く時期でもあります。
「資本主義以後」の世界に向けた四つの展望を描いた作品。四つの展望として「コミュニズム」「レンティズム」「ソーシャリズム」「エクスターミニズム(絶滅主義)」があげられています。そして、この四つの未来に関わってくる“二つの妖怪”が「自動化」と「気候危機」。四つの展望✕二つの妖怪から見える未来に向けてどう行動していったら良いのかを考える1冊です。
AIの進化と負けず劣らずアツいのが「寿命」にまつわるお話。関連する本も多く出版されています。これまでも寿命を決める遺伝子があるという話は色々ありましたが、この本では、女性が長命であるという裏側にある「男性は短命」という理由に着目した本。著者はこの男女の差異+女性の遺伝子の優位性に注目することが、新しいアプローチに繋がると論じています。一方で、汎用性のために男性にあわせて開発されている治験や投薬に課題はないのか?といったことを考えていきます。
2016年の全米図書賞ノンフィクション部門を受賞した話題の作品。黒人がどうやって「劣った人種」とされてきたのかを探っていきます。政治・経済・文化的な利己主義から、「性」が誘導して、「宗教」や「科学」が追従してその差別を正当化してきたアメリカ社会。この歴史を描いたノンフィクション。先月はもう一つ気になる人種差別ものが発売されています。誰もが意図せず行っている習慣的差別について考察した『人種差別の習慣: 人種化された身体の現象学』。こちらもあわせてどうぞ
表紙オビには「発酵界のインディ・ジョーンズ」という高野秀行さんからの推薦文の文字が躍ります。発酵界という世界はどれだけ広いのか、深いのか…インディ・ジョーンズと称されたのは、『日本発酵紀行』などを送り出して来た小倉ヒラクさん。商品紹介だけ読んでも、なんとなく想像出来そうな「チベットのバター茶」からはじまり、高級なプーアル茶、などからはじまって「納豆コケカレーにどぶろくをあわせる」といった想像を絶するものまで様々な食&発酵文化が綴られています。様々な民族が織りなした発酵文化に飛び込んだ意欲作!
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コロナ明けての年末年始は人の移動も多くなりそうです。せわしない毎日だからこそ、本を片手にゆっくり考え事をする時間もとりたいもの。
書店店頭で年末年始のお供を探してみてください。