いよいよ年の終わりが見えてきました。年末年始は重厚なノンフィクションの読み時、ということで今年も多くの本が出版されそうです。
12月のはじめには『大阪の生活史』が登場します。この姉妹版とも言える『東京の生活史』はベストセラーになったほか、多くの賞も授賞し話題になりました。150の人が聞き、語った膨大なインタビュー集。人の経験やまなざしを通じて大阪という街が描かれていきます。
せわしない12月という月に少しずつ読むのにこれほど適した本もないかもしれません。
気になる本多数だった12月発売予定の新刊から、いくつかピックアップして紹介していきます。
どこか既視感のある本だなと思ったら、著者はあの『タコの心身問題』の著者でした。心はなにから、いかにして生じるのか、というテーマに挑んだのが前著。様々な書評でも取りあげられ話題になりましたが、HONZでも冬木がレビューしています
今回のテーマも心の進化です。海の生物たちの生活に密着することで、心の発生についての謎に迫ります。
続いてもサイエンス本。ガリレイやニュートン、ダーウィン…と、ヨーロッパで誕生しヨーロッパで築かれたとされている科学史を「でっち上げ」と覆そうと試みているのがこの著者、ジェイムズ・ポスケット。彼によると、近代科学の発展にはアメリカやアジア、アフリカなどの世界中の人々が著しい貢献を果たした、というのです。そのでっち上げストーリーが生まれた背景には、政治やイデオロギーがありました。これらによって書き換えられてしまった科学の歴史から科学の未来を考える歴史的な1冊。
コロナ禍が明け、競馬場入場者が増えた、売上げが増えた…といったニュースを耳にする機会が増えました。今年は競馬界も盛り上がっているようです。
動物ノンフィクション作家、片野ゆかさんが引退した競走馬の“セカンドキャリア”を追ったのがこちらの本。ここ数年で、引退競走馬をめぐる状況は大きく変わっているそうです。どんな人たちが支えているのか、引退競走馬たちはなにをやっているのか。その活動を通じて見えてきた社会への期待感とは?馬券を買うのにあわせてぜひこちらもどうぞ!
亜紀書房のノンフィクションシリーズからは1990年代のニューヨークを恐怖に陥れた殺人者「ラストコール・キラー」を描いたノンフィクションが登場します。バラバラ死体となって発見された男性4人は、ゲイ男性。閉店間際のバーから誘い出されて殺害されたことから、犯人は「ラストコール・キラー」と呼ばれることになります。関係者への徹底的な取材から見えてきたのは、ゲイの人々に向けられた差別の実態の数々でした。
ウクライナとロシア、ハマスとイスラエル。国境についての争いは今年も収まるどころか激しさを増しています。島国日本では越境といったら海を越えるのが当たり前ですが、世界の国は列車で国境を越えるところがほとんどです。そういった各国の国境を実際に列車で越えてみるというのがこちらの本。
目で見える国境、そこを通る人たちとその環境はどのようなことになっているのでしょう。
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2023年の総決算!と言っていいほどの豪華な新刊リストが出来上がってきます。ここに紹介しきれない本も沢山ありますので、ぜひともお近くの書店に足を運んでみてください。