この1ヶ月、ワグネルの乱によって大きく世の中が揺れました。これにより、民間軍事会社が戦争を行っている、ということが改めて白日の下にさらされ、この反乱によってワグネルという存在を知った人も多かったのではないでしょうか。
世の中を見回してみると“こんなことも民間が!”という話が沢山あります。そしてそんなノンフィクションも多く出ている中、ひっかかったのがこの『民間諜報員: 世界を動かす”スパイ・ビジネス”の秘密』でした。
国家のために使う技術であった諜報技術を金儲けのために使う。そんなスパイが世界中で跋扈しているという恐ろしいノンフィクション。こういう人たちに動かされる世界がどうなるのか…その答えも見えてくるのかもしれません。
来月発売予定の新刊から気になったものをいくつかピックアップして紹介していきます。
まずは話題になること必至のこちらから。世界を揺るがす事件となっているジャニー喜多川氏の性加害問題を告発したカウアン・オカモト氏の半生と今の思いを語ったという注目作。
果たして新たな事実は出てくるのでしょうか。目が離せません。
先日、米国でアルツハイマー病の新薬「レカネマブ」が承認されたというニュースが駆け巡りました。アルツハイマーとの戦いの大きな一歩になるのでしょうか。一方で、アルツハイマー病研究には大きな課題もあるようです。アカデミズム、製薬、関係官庁が一緒に迷走してきた、そして10年から15年が無駄になった…という衝撃の告発の書。この告発が新しい世界を切り拓くのでしょうか。
これだけ異常な暑さ、異常な雨量が続くと「気候変動」というのを体感せずにはいられません。著者、ガイア・ヴァンスはこれまでも『進化を超える進化』などを送り出してきた著者。今世紀中にもこの気温はさらに上昇し、10億人以上が移住をしなければならない時代がやってくる、と著者は説きます。しかしこのなかでもまだ希望も残っているとも。最新データから描き出される近未来はどのようなものになっているのでしょうか。
記憶と幻覚はどこが違うのか。この本の内容情報に書かれていた1文にひっかかりました。記憶ということから見たら、現実に起こったことも、幻覚として見たことも一緒。では記憶とはなんなのでしょう。著者は精神科医。脳や意識、心が織りなす不思議を解きほぐすという1冊。
AIの時代を考えるためにも読んでおいたら面白そうな作品です。
意外にも意外に、動物たちが何を考えているのかの研究が本格化したのは最近のことだったようです。近年、動物の認知やコミュニケーションに関する研究が進んだことで様々なことがわかってきました。
シジュウカラが仲間にウソをついている、とか天敵の種類によって異なる鳴き声を出すとか。著者二人が最新知見をこれでもかと語りあった1冊。読み物としても楽しめそう。
先日、最新作『自然、文化、そして不平等』が発売されたばかりのトマ・ピケティ。なんとピケティ本が2ヶ月連続の刊行です。この『資本とイデオロギー』は邦訳が2021年に告知されていました。待ちに待った超大作がいよいよ登場します。世界史を巨大なスケールでたどり、イデオロギーと格差の関係を明らかにした話題作。1136ページという大作ぶりには、売り手も戦々恐々としています。まるで辞書のボリューム。さて、どんな動きになるのでしょう。
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この夏も、世界の動き、社会の動きを深堀できそうな話題の本が揃いました。
暑い夏、涼しいところで読書はいかがでしょう。