あまりスッキリとした秋晴れに恵まれなかった10月でしたが、ノーベル賞の発表などもありノンフィクションジャンルは盛り上がりを見せました。特に、ネアンデルタール人のゲノム解読をテーマにしたペーボ教授の影響で、ネアンデルタール人関連書には注目が。
新刊では、HONZでもレビューが発表されている『無人島のふたり』が良く動いています。また久しぶりの大型新刊となる沢木耕太郎の『天路の旅人』は発売直後ですが、すでに大きな話題に。
西川一三という、第二次世界大戦末期に日本の密偵として中国大陸の最深部にまで潜入した人をテーマにしたノンフィクション。日本が終戦した後も旅を続け、逮捕、日本への送還となった彼の旅を追っています。沢木さん自身も9年ぶりの長編ノンフィクションということなので、今後もさらに各所で話題になるでしょう。
他にはどんな本が発売され、売れていたのでしょう。10月に出た注目作品をいくつか紹介していきます。
この本のことを調べようと「運動しても痩せない」と検索したら、非常に多くの検索結果が出てきました。同じ事で悩んでいる人がいかに多いかがわかります。そんな誰もが抱く疑問に最新科学の視点で迫ったのがこちら。実は1日の総消費カロリーは運動しても増えていなかったのだそうです。これはカロリー消費を正確に測るという技術のおかげで見えてきた事実。
とはいえ、じゃあ運動しなくてもいいのか、というとそれは大きな間違いで、だからこそ運動をしなくてはならないのである、と著者は説きます。その真相とはいかに。
長年謎に包まれていた「餃子の王将」社長射殺事件で、暴力団関係者が犯人として逮捕された、というのは10月の衝撃ニュースの一つでした。事件の裏側はまだ見えてきませんが、ヤクザと企業の関係に関する事件なのかもしれません。この作品は、金融機関とヤクザの結びつきについてのノンフィクション。元日銀マンの著者が、バブル崩壊後に強まったその結びつきがなぜ出来てしまったかに迫ります。
サッカーワールドカップ間近ということで、サッカーノンフィクションも豊作です。これは近代サッカーの父とも呼べる存在のアールパード・ヴァイスにまつわる物語。ファシズム政権下で、選手としても監督としても活躍し華々しい実績を残したものの、突如として姿を消します。彼が向かった先はアウシュヴィッツでした。そして、数年後にガス室で命を落とすことになります。悲運のサッカー監督を巡るノンフィクション。
著者、三浦英之さんはアフリカゾウの密猟組織を追ったノンフィクション『牙』でも話題になりました。今回は同じくアフリカ、コンゴがテーマ。1970年~80年代の経済成長期に、資源を求めアフリカ大陸に繰り出した日本。しかし、その後その計画は頓挫、一方で、日本人労働者と現地女性の間では結婚や家庭を持つということも行われ、数百人の子どもが産まれていたといいます。その後、現地に置き去りにされた子どもたちがどうしていたのか、この日本人遺児たちを追ったノンフィクション。
最近「ゾンビ資本主義」という言葉が聞かれますが、こちらはあくまでも『ゾンビと資本主義』
ホラー映画やドラマですっかりお馴染みの存在になったゾンビですが、その誕生は19世紀のハイチだったそうです。アメリカ映画でモンスターとして登場したのち、社会のさまざまな事象を代弁する言葉としても活躍するようになります。人を襲い、噛まれたらその人も同類になるというゾンビ。その存在を読み解きます。著者はホラー小説家としてホラー小説大賞も受賞している遠藤徹さん。
もし人間が滅びたら、、、という本はいくつもありますが、では人間と共存してきた犬はどうなるんだろうか?という謎に迫る1冊。
毎日人間と散歩に行き、餌をもらい生きてきた犬ですが、生き残ろうとしたときにどのように生き残り繁殖をしていくのでしょう。生物学、生態学、近縁種の生活や行動研究の最新知見から犬の未来を考えます。
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11月は先日「これから出る本」でも紹介したとおり、重厚なノンフィクションがどしどし発売されていきます。秋の夜長、良い読書時間をお過ごしください!