ウクライナの状況が変わらない中、世界経済や物流の混乱が始まっています。「なぜ」と「これからどうなるのか」に答えてくれる本、考える助けになる本が続々と刊行されてきそうです。 これからどんな本が出てくるのでしょう。
2022年5月18日時点の予約受注実績からこの先発売になるタイトルを抽出しノンフィクションの予約ランキングを作成しました。(日販調べ:タイトル・発売日等今後変更になる可能性があります)
上位に『地球、この複雑なる惑星に暮らすこと』が入ってきました。根っからの昆虫好きだったヤマザキマリが昆虫好きの先輩として慕う養老孟司と交流した4年間、様々なテーマについて語り合った対談です。
出版社 | 商品名 | 著者名 | 発売予定年月日 |
KADOKAWA | 『NHKスペシャル 戦争の真実シリーズ3 731部隊の真実』 | NHKスペシャル取材班 | 20220801 |
文藝春秋 | 『地球、この複雑なる惑星に暮らすこと』 | 養老孟司 ヤマザキマリ | 20220527 |
ダイヤモンド社 | 『起業の戦略論』 | 高宮 慎一 | 20220818 |
小学館 | 『日本鉄道大地図館』 | 小学館 | 20220929 |
宝島社 | 『プーチンの正体』 | 黒井 文太郎 | 20220527 |
KADOKAWA | 『地球は食べ物 いきもの獲って食べてみた日記』 | ホモサピ | 20220727 |
笠間書院 | 『日本怪異妖怪事典 近畿』 | 朝里 樹 | 20220524 |
講談社 | 『荘子の哲学』 | 中島 隆博 | 20220609 |
講談社 | 『カラー図説 生命の大進化40億年史 古生代 生命はいかに誕生し、多様化したのか』 | 土屋 健 | 20220616 |
河出書房新社 | 『なんでもいっぱい大図鑑ピクチャーペディア』 | スミソニアン協会 | 20220524 |
では、これから出る本リストから注目作品を紹介していきます。
今回、ヒトの進化について考える本が目につきました。その中でも一番気になったのがこちら。なぜヒトだけが絶滅せず生きのびたのか、その答えは「自己家畜化」したということにある、とこの本は解いています。
著者は進化人類学者、見知らぬ他人を助けるという優しい心を持つ一方で、残虐な戦争を引き起こすこともある、そんな進化はなぜ起こったのか。今回のウクライナ問題の答えも見つかるかもしれません。
有事の時のフェイクニュースやデマの問題に端を発し、最近はデマやフェイク分析が積極的に行われています。この本もそういった研究によるもの。感染症の拡大にも、戦争の勃発にもその起点には「デマ」が存在したようです。
全米での発売時には多くのメディアにも注目され、話題となった1冊。
SNS関連では『ソーシャルメディア・プリズム』も気になります。こちらではソーシャルメディアは、各自のアイデンティティーを屈折させるプリズムだと警告し、SNSによってヒトが過激になるプロセスを解き明かしています。
前作で気候変動の回避方法を提言したビル・ゲイツが早くも新刊をリリースします。今回のテーマはパンデミック。もともとビル・ゲイツはパンデミックの脅威を訴え続けており、今回のコロナ禍についても、また新たな疫病が襲ってくると危機感を募らせていました。
英語版『How to Prevent the Next Pandemic』も5月に発売されたばかりの新作。早くも日本上陸です。
著者は『CIA秘録』『FBI秘録』で話題になったティム・ワイナー。原題は『The Folly and the Glory: America, Russia, and Political Warfare 1945-2020』
2020年の刊行なので、少し前の話になりますが、アメリカ・ロシアが75年にわたって繰り広げてきた情報戦争の実態が描かれています。米国の各メディアも絶賛の作品。
「ツキが続く」絶好調な状態のことをホットハンドと言うそうです。もともとはバスケットボールで連続シュートが決まることに由来したその言葉、様々な分野で”ツキ”として信じられてきました。が、1985年に認知バイアスの研究者が否定してから大論争が続いていました。果たして”ツキ”は実在するのか、単なる思い込みなのか。その正体を様々な見地から解き明かしていきます。
果たしてその結論は!?
*
こうやって新刊リストを見ていると、目の前に横たわる絶望的な事に対しても、楽しいことに対しても「なぜ」という問いを続ける各界の研究者がいるのだなということに気づきます。本の中には悲劇を脱するヒントも眠っているかもしれません。一日も早く、平和が訪れますように。