私事で恐縮ですが、先月末で日販を退職しました。現在お休みを満喫しながら、この先のことを考えています。そんなわけで、これまでのようにランキングを使った情報提供が出来なくなりましたが、ネット上の情報を駆使しつつ「先月出た本」「これから出る本」をお送りしていきたいと思います。
3月はウクライナ侵攻に揺れた月でした。ウクライナとはどんな国なのか、プーチンはどんな人なのか、そしてロシアの軍事戦略など関連本が大きく動いています。ではその他のノンフィクション本ジャンルではどんな本が発売されていたのでしょうか。3月に発売された気になる本いくつかを紹介いたします。
ウクライナ侵攻をきっかけに『地球の歩き方 ロシア』の問い合わせが増えたという話を聞きました。そしてロシアの地図を求めるお客様も多かったようです。たとえ現地に赴くためでなくても、その地域を知り、想像を膨らませるという意味でも地図は重要です。この地図の進化史は、古代地図からGoogleマップに至るまでの歴史を紹介したもの。自分のいる世界を理解して、何かの狙いを持って産み出された地図。そこには様々な人たちの歴史があったようです。
新世紀の戦争の中刊行された、米ソ冷戦下のノンフィクション。CIAとKGBのスパイに生まれた友情とその絆によって持たされた事件。まるで映画のストーリーのような話ですが、正真正銘のノンフィクションだそうです。それぞれが相手をリクルートするつもりで接近したものの、そこに計算外の友情が芽生えます…。
ハリウッド映画に描かれた冷酷なKGB職員とは全く異なった魅力に溢れるKGBのゲンナジーの姿や、冷戦時のスパイの攻防、今のこのときに読んでおきたい1冊です。
地球を救う存在として、最新技術検討のモデルとして、様々な角度から昆虫が注目されています。蚊やアブすらヒトの暮らしを支えるために役割をこなしているのだと著者は言います。中にはプラスチックを消化してくれる虫や、治りにくい傷を治癒するチカラがあるという虫、そしてあのゴキブリも頼りになる局面があるのだとか。
まさに地球の縁の下の力持ちである昆虫に注目したノンフィクション。恐竜より前から地球に住んでいた昆虫を見直すきっかけになりそうです。
著者は1978年生まれの女性です。植物の持つ癒やしの力や病気と闘うための力を使い新たな薬をつくり出していくという活躍はまさに薬草版のプラントハンターといったところ。
彼女が義足である理由は、ベトナム戦争で父親が枯葉剤を浴び、骨格異常で生まれた事が原因だったのだそうです。幼少期で右足を切断した後、医学を志し、新薬を求めて世界中を飛び回るその半生を自らが描きます。
コロナ禍でアナログおもちゃに注目が集まり、様々なおもちゃの再ブームが起こっています。ルービックキューブもそのひとつ。ルービックキューブは、その名の通りエルノー・ルービックが開発したものです。発明は1974年。そこから40年以上がたった今も、多くの人を熱狂させています。
どんな発想からあのキューブが発明され、愛されるおもちゃに至ったのか、その半生が語られた自伝です。
フランスでは近親姦が大きな問題になっているそうです。2020年の調査では国民の10%がこういった被害にあっていたということが明らかになっています。それがさらに大きな社内問題になるきっかけになった本がこちら。2021年1月にフランスで刊行されたこの本では、エリート学者である継父が双子の弟を性虐待していたことが告発されました。また、周囲の大人もそれを黙認していたことも。この告発をきっかけに、有名人による近親姦告発が立て続けに行われ大きな問題となったそう。フランス社会を動かした大ベストセラーが日本に上陸しました。
4月からのNHK100分de名著はハイデガーの「存在と時間」がテーマとなっています。その指南役を務める戸谷洋志さんの著作が立て続けに刊行され、注目を集めています。スマートであることはすべてが望ましいものであるのか、超スマート社会はネガティブな側面を持っていないのか、つまり「スマートな悪」について考えるというのが本書のテーマ。また、戸谷氏の研究テーマである『ハンス・ヨナスの哲学』も文庫版が刊行されました。(原題は『ハンス・ヨナスを読む』)
価値観が揺らぎ、それによる不安が蠢く中、どうやってそういう不安と向き合っていったら良いのかというのは、今の時代にぴったりのテーマではないでしょうか。