12月に入り、読書界も今年の総括や今年のベストが発表され続けています。16日には芥川賞・直木賞候補作品も発表され盛り上がりを見せ始めました。ノンフィクションジャンルでは『嫌われた監督』などが好調に動いています。年末年始はゆっくり本を読むのに最適な時期です。これから、どんな本が発売されてくるのでしょう。これから出る注目ノンフィクションを紹介していきます。
2021年12月18日時点の予約受注実績からこの先発売になるタイトルを抽出しノンフィクションの予約ランキングを作成しました。(日販調べ:タイトル・発売日等今後変更になる可能性があります)
予約作品上位には1月から始まるNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』に関連し、北条家関連の本がいくつか入ってきています。原作小説がない作品の場合は関連作品や、番組ムックなどがよく売れますがされ今回はどうなるでしょうか。
気になるのが『アマゾンの最強の働き方』です。ちょうど、12月上旬にはジェフ・ベゾスが自ら筆をとった『Invent & Wander』が発売されたばかりで、大きな話題になっています。
創業者、創業間近なところから会社を支えた幹部それぞれの目線でのアマゾンをあわせて読み解くことで今後のAmazonの姿も見えてくるかもしれません。
出版社 | 商品名 | 著訳者名 | 発売予定年月日 |
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NHK出版 | 『日本人の宿題』 | 半藤 一利 | 20220111 |
筑摩書房 | 『人類5000年史4』 | 出口 治明 | 20220107 |
牧野出版(京都) | 『冤罪と闘う』 | 藤井 浩人 | 20211228 |
明日香出版社 | 『社長の覚悟』 | 曽根 康正 | 20220120 |
新潮社 | 『秘闘』 | 岡田 晴恵 | 20211222 |
河出書房新社 | 『鎌倉殿と13人の合議制』 | 本郷 和人 | 20220127 |
河出書房新社 | 『シティポップとは何か』 | 柴崎 祐二 | 20220301 |
彩図社 | 『ホームレス収容所で暮らしてみた』 | 川上 武志 | 20211228 |
小学館 | 『史伝北条義時』 | 山本 みなみ | 20211223 |
ダイヤモンド社 | 『アマゾンの最強の働き方』 | コリン・ブライアー | 20220127 |
これから出る本リストから注目作品を紹介していきます。
コロナとの戦いを考える上で、読まないわけにはいかない1冊が早くも邦訳されます。これはファイザーワクチンを驚異的なスピードで開発したドイツ・ビオンテック社の創業者を追ったノンフィクション。mRNA医薬の分野で最先端を走っているこの企業はどのように産まれ、どうやってこの大きなプロジェクトを完成させたのか。まさにコロナ禍、そして今年を代表するに相応しいノンフィクションかもしれません。
AI技術を使って中国全土に監視網を張る。まるでSF小説のような話が事実になりつつあるのだと言います。そして新疆ウイグル自治区はその実験場となっている、と。この現状を世界に向けて訴えた原著『The Perfect Police State』は今年6月に発売され大きな衝撃を巻き起こしました。早くも邦訳が登場します。
著者はあの名著『コンテナ物語』の作者です。世界中の物流が混乱し、コンテナ不足が叫ばれる今こそ読むべき世界の物流史。モノの時代からアイデアやサービスの時代に移り変わってきた動きの中で、コロナ禍が新しい変化要素を与えました。今後世界のモノの動きはどうなるのか興味深いテーマです。
多くの事件取材を手がけてきた一橋文哉が挑んだのは、死刑囚の処刑直前の姿とそこで出てきた声。和歌山毒カレー事件やオウム真理教事件、秋葉原無差別殺傷事件、相模原障害者施設連続殺傷事件、埼玉愛犬家連続殺人事件、木嶋佳苗死刑囚による婚活連続殺人事件などの死刑囚の姿や生活を追った衝撃のノンフィクション作品です。
『サイロ・エフェクト』で組織が陥るサイロの罠について警鐘を鳴らしたジリアン・テットが挑んだのは、“なぜ経済学やビッグデータ分析は問題解決に失敗するのか?”というテーマ。これまで、世の中を知るために使われてきたツール、例えば経済予測や世論調査などが外れてばかり、という状態に陥るのは視野が狭いからだ、と彼女は言います。変化の激しい時代には視野の狭さは命取りになる、ではどうしたらいいのか。正しく社会を見る技術について論じます。
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コロナ禍期間中、世界の主要なブックフェアが中止になるなど出版業界、とくに翻訳出版界は大きな影響を受けました。一方で、世界的に話題になった作品が半年から1年で邦訳されるといった事例も多くなっている気がします。今も物流混乱が続いていますが、今後世界がどうなっていくのか、そういうことも読み解けそうな本が揃いました。良い読書時間をお過ごしください。