10月。ノーベル賞の各賞受賞者が発表されるノンフィクション業界にとっても注目すべき月でした。2022年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』に関する話題が増えて来たタイミングでもあり、北条家関連の書籍の動きが目立つようになっています。10月はどんな本が出て、売れていたのでしょう。
日販オープンネットワークWINから10月発売のタイトルとHONZのレビュー対象となるノンフィクションジャンルのタイトルを抽出しランキングを作成しています。(2021/10/1~2021/10/31の売上)
1位になった『現代文解釈の基礎』については、それをノンフィクションとするのか?参考書ではないか?という指摘があることは理解した上で、10月のノンフィクションシーンに刻んでおきたいが故にあえて抽出対象としました。
本書は現代文の参考書の名著でありながら、長らく絶版とされていた本でした。この本が、いまや大ベストセラーであり鈍器本ブームの火付け役となった『独学大全』で取りあげられ、SNS等で火がつき、そして復刊になり、驚異的な売上を記録するに至った…というのは、今後大きな話題になりそうです。
出版社 | 書名 | 著者 | |
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1 | 筑摩書房 | 『現代文解釈の基礎』 | 遠藤嘉基 |
2 | 講談社 | 『岸田ビジョン分断から協調へ』 | 岸田文雄 |
3 | 宝島社 | 『自民党失敗の本質』 | 石破茂 |
4 | 文藝春秋 | 『立花隆の最終講義』 | 立花隆 |
5 | 集英社 | 『それでも映画は「格差」を描く』 | 町山智浩 |
6 | 新潮社 | 『亡国の危機』 | 櫻井よしこ |
7 | 講談社 | 『100万回死んだねこ』 | 福井県立図書館 |
8 | SBクリエイティブ | 『子どもの発達障害』 | 本田秀夫 |
9 | KADOKAWA | 『報道現場』 | 望月衣塑子 |
10 | 中央公論新社 | 『三好一族』 | 天野忠幸 |
11 | 宝島社 | 『古代豪族の興亡に秘められたヤマト王権の謎』 | 古川順弘 |
12 | 中央公論新社 | 『南北朝時代』 | 会田大輔 |
13 | 中央公論新社 | 『歴史修正主義』 | 武井彩佳 |
14 | 集英社 | 『羽生結弦未来をつくる』 | 羽生結弦 |
15 | ポプラ社 | 『世界を救うmRNAワクチンの開発者 カタリン・カリコ』 | 増田ユリヤ |
16 | 中央公論新社 | 『宗教図像学入門』 | 中村圭志 |
17 | 朝日新聞出版 | 『米中戦争』 | 宮家邦彦 |
18 | PHP研究所 | 『5000日後の世界』 | ケヴィン・ケリ- |
19 | 朝日新聞出版 | 『江戸の旅行の裏事情』 | 安藤優一郎 |
20 | 毎日新聞出版 | 『破壊者たちへ』 | 青木理 |
他にも気になる新刊がたくさん!10月発売の気になった本を少しご紹介していきます。
コロナ禍中、外で飲食する機会が途絶えたことで多くの人がアルコールとの付き合いの変化を感じているかと思います。減った人、増えた人、そして、久しぶりに外で飲んで適量がわからなくなって酩酊した人(私ですが)。そういった中、アルコールを飲めないのではなく、飲まないという生き方に注目が集まっています。世界が注目するその新しいライフスタイルがソバーキュリアス。自ら禁酒を選んだ人の背景や、その禁酒がもたらしたモノ、そしてこれからもたらす事について考える実践本。
技術の進化の方に目が行きがちですが、この本では人類の知能が著しく低下している。と説きます。それは産業革命以降進んでおり、近い未来文明が崩壊することを意味するといいます。淘汰の厳しさにさらされなくなったため、知性が急速に衰退している、と言うのです。原著発売は2018年。気にしておきたい1冊です。
世界的な成功を収めた芸術家となった草間彌生。自伝を含め、著作や関連作品は少なくありませんが、これはイタリアのグラフィックノベルという形を取って発表されたことが非常に面白い点ではないでしょうか。芸術という場での「闘い」を鮮やかに描いています。すでに各国でも翻訳版が刊行されているとのことで、世界的な注目度の高さを感じます。
失敗から学ぶのが大事だとはわかっていながらも、自らの失敗は怖いもの。でもここに出てくる社名と失敗事例を見ると、失敗が怖くなくなるかもしれません。たとえば…Case15では今をときめく企業、ネットフリックスが取りあげられています。そして失敗の理由は”反対意見が言いにくい空気に気づけず失敗“。どこの会社にもありそうなその空気。この失敗をどう成功へ転換していったのか、そこには多くの気づきがありそうです。製品図鑑なだけに、失敗作図鑑としても楽しめそう。
発売から間もない時期ながら、勢いよく売れ出しているノンフィクションがこちら。
” 金融庁に、「霞が関のジローラモ」と呼ばれた男がいた。“ という内容情報の書き出しだけで気になって、ついつい画像検索をかけました。警察、自衛隊、国税庁…そこでのプロの闘いを描くノンフィクションはいつも大きな反響を呼びます。異能の官僚が挑んだ数々の金融事件回想は同時代を生きた人にとって多くのことを考えさせる1冊になるでしょう。
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そろそろ今年の各ジャンルベストが選ばれ、発表される時期となってきました。ノンフィクションジャンルではYahoo!ニュース|本屋大賞 2021年ノンフィクション本大賞がそろそろ発表となります。ぜひご注目を!