昨年、一人暮らしをする88歳の母の家を大きくリフォームした。足腰が弱くなり、生活に不安が出始めて、初めて今後の希望を聞くと、ヘルパーさんの手を借りて現状のまま家で暮らしたいと強く言う。
ならばと、ケアマネ、看護師、介護士、専門業者の知恵を借り、手すりをつけ段差を解消し、介護ベッドや高齢者用の台所を一気に導入してみた。
日常の動線を見直すだけで、こんなに変わるものなのか。母は驚くほど元気になった。看護や介護の専門の知恵をさらに知りたいと痛感した。
本書は日本看護管理学会例会「病院看護と訪問看護のコラボ ― 本当に“事例から学ぶ”しくみを作ろう」というコンセプトから作られた「いいね♡看護研究会」の活動から生まれた。
看護実践の一場面の写真と、撮影の意図をポスターのように掲示し、研究会参加者がコメントを書き入れ、その後ディスカッションした33例が紹介されている。信頼を置く看護師が撮ったものだからだろう、被写体は自然で状況がよく理解できる。
急性期病院、慢性期病院、介護施設、訪問看護ステーション、大学など参加した看護職の活動の場は多様である。一口に看護師と言っても、世代も経験も全く違う。それぞれの現場を語り合うことは発見や反省を見出し、コミュニケーションにも役に立つ。
患者や家族などの当事者にとっても、どこまで要求できるのか、何をどうしたらいいのかが明確に理解できる。行き場のない不安や不満は、プロの手を借りることで、解消されることも多いことがよくわかる。
在宅療養でひげ剃りができるようになった男性、認知症の妹の介護のため自分の病気は通院で直す91歳の兄、入院患児のきょうだいへのケアなど看護職それぞれの実体験を写真と経験談で追体験できるのだ。
人がどう生きてどう死ぬか、その手伝いをどのようにしてもらうのか。自分ならどうしたいか、を改めて考えさせられる貴重な証言集である。(週刊新潮2/27号より転載 写真は編集部よりお借りしました)
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