本好きなら必ず一度は通る雑誌「本の雑誌」は創刊から43年が経つ。私にとって、最初は本を探す指針であり憧れだったから、後にこの編集部から仕事の依頼があったときには、天にも昇るほど幸せな気持ちになったのをよく覚えている。
現在でも連載中の「この作家この10冊」は、お気に入りの作家のお気に入りの10冊を、書評家、編集者、書店員、ファン、作家などなどが、それぞれ10冊紹介するコーナーだ。選ばれた作家50人で合計500冊、最強のブックガイドという帯は大げさじゃない。(表紙には作家の名前が出ているので、まずは参照してください)
例えば映画化された作品を書いた作家、例えばネットで話題となった作品、そして本屋で気になった装丁の小説。なんのきっかけでもいいけれど、この作家の本を知りたい、どれを読んだらいいか教えてほしい、という期待に応えるには十分だ。
10冊をオススメしている人は、おおむねその作家のファンだ。なぜその人が好きか、どんな作品が心に響いたかを書いている。
私が紹介したのは「北方謙三」。ご存知“顔文一致”のこわもて作家である。知っている人は知っているだろうが、私は彼の秘書を22年務めた。作品の資料を集め整理するのが仕事のひとつだったので、多くの作品が生み出される現場にいたのだ。そして私のオススメする北方謙三作品は、何かのきっかけで、彼のモチベーションやギアが一段上がったものである。
そのきっかけの多くは「人」である。編集者、出版社社長、大学教授、書評家、そして父祖たち。
30代後半から60歳まで、一人の作家が大量の小説を書き続けるところを見られたことは、本当に幸せだったと心から思っている。
ぜひ本書を手に取って、気になる作家の本を探してほしい。