著者はボクがこれまでにお目にかかった経営者のなかで3本指に入る無茶な人だ。ある意味でビル・ゲイツや孫さんを超える。戦国時代から続く伊勢の超老舗当主が約束されていた人だ。創業は天正3年。この年、伊勢から直線距離で50km北東では織田信長と徳川家康が武田勝頼と戦っていた。長篠の戦いである。
東北大学では血尿がでるまで空手に打込み、社会人になってからは盛大な失敗つづき、やがてクラフトビールを作り始め、世界の賞を総なめにし、審査員としても世界中を飛び回るようになる。さらに酵母を突き詰めようと中年になってから博士号を取り、世界でも稀な超研究開発型クラフトビール会社を完成させた。いまこの会社には博士号や修士号をもつ若い社員が多数働いている。ついに可能性の塊のような会社を作り上げたのだ。
彼とは週刊新潮の取材で初めてお目にかかった。伊勢で一番古い老舗餅屋さんを取材しにいったつもりだった。お目にかかって即座にピンときた。只者ではない。まちがいなくボクを超えるADHDだ。その素質と選んだ事業が噛み合えばなにかの覇者になるであろうと。
あまりに面白い人なので、半年ほど前にホリエモンに紹介した。多動性のホリエモンは即座に伊勢に飛んだ。後日、ホリエモンは鈴木さんほど科学的で技術にも明るい醸造家を知らないと報告してきた。彼が本気になると日本酒にも革命を起こせるだろうと。
本書は彼がなにかの覇者になる途中経過の本である。20年後彼が何をやっているかいまから楽しみだ。
ともあれ本書はボクの旅友達でHONZメンバーの新潮社足立真穂が編集を担当した。同じくボクの飲み友達でHONZメンバーのメルヘン栗下直也がライティングを手伝っている。企画段階ではボクも手伝った。総力戦で作った本だ。是非お読みいただきたい。損はないことを保証します!