2019年7月17日、 第161回芥川・直木賞選考会が行われ、直木賞に文楽の浄瑠璃作家、近松半二を主人公に据えた『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』が選ばれた。(禁を破ってHONZに仲野徹が書いたレビューはこちら ちなみに仲野は浄瑠璃を習っており、著者の兄弟子に当たる)
私はこの15年ほど文楽に嵌りまくっている。関連本を読みあさっていたのだが、まさかこの知識が日の目をみる時がこようとは、思ってもみなかった。
ユネスコの無形世界遺産になっている文楽・人形浄瑠璃だが、歌舞伎や落語などに較べて知られているとは言い難い。この『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』を書店で展開するときに、関連書として並べてほしい本を一覧にしてみた。
なにはともあれ「文楽って何?」のガイドブック
入門書は数あれど、今年出たこの本はとても分かりやすいです。「マンガ?」と思って手に取らなかったら、仲野が「すごいええで~」と激プッシュ。確かにいいです。オススメ。
当代の花形人形遣いふたりの本です。吉田玉女は、いま玉男を襲名しています。
赤川次郎さんの文楽好きは、つとに有名です。とにかくわかりやすく説明してくれます。
もうひとり、文楽好きな作家といえば三浦しをんさん。劇場でもよくお会いします。
今年急逝された橋本治さんは文楽の庇護者でした。今この時、橋本さんの不在はなんとざんねんなことでしょうか。
もうすぐ発売。これも期待できます。
近松半二が私淑し目指した近松門左衛門。戯作者とはどういう人か、この本はとてもよく理解できます。
大島真寿美さんの習っている浄瑠璃教室で、先輩の小説家である広谷さん。この本も文楽愛にあふれています。
橋本さんが亡くなられた一月後、ドナルド・キーン先生も逝去された。ご健在ならどんなに喜ばれたことか。残念でなりません。
文楽を題材にした小説
この小説で文楽を知った人も多いはず。現代の文楽技芸員の生活を活写しています。
私にとっての文楽の小説といえば、これ。芸道一筋の男に惚れこんだ激烈な恋愛模様。
田牧大和でも文庫化されてないか…。文楽といえば大坂ですが、こちらは江戸での物語。ミステリー色は強いけど、かなり面白いです。古本がえらい値段になってます。
第9回島田荘司選ばらのまち福山ミステリー文学新人賞準優秀作。文楽の名作『摂州合邦辻』下敷きにしています。相当歌舞伎がお好きなようです。
昭和・平成の名人伝
昨年4月に亡くなった人間国宝の浄瑠璃語り、 住大夫の本は数あれど、晩年のこの本は読み応えあります。
人間国宝の三味線弾き、鶴沢寛治さんも昨年9月に亡くなりました。 文楽はいままさに代替わりの時代を迎えています。
2015年に亡くなった9代目竹本源大夫は4代続く文楽の家系。『妹背山婦女庭訓』の妹山背山の掛け合いを初めて見たのが源大夫と住大夫でした。語り終わって疲労困憊したのか、立ち上がれなかったことをよく覚えています。
当代のスターたち
大島真寿美さんの(ついでに仲野徹の)お師匠さま。一般人向け義太夫発声教室は気持ちいいです。
当代の花形人形遣いが入門50周年を記念して上梓。キツネの人形を遣わしたら世界一かもしれません。
NHKEテレ「日本語であそぼ」で人気の豊竹咲甫太夫が2018年春、六代目竹本織太夫を襲名の折に上梓しました。
この時期に発売されるとは強運!「ちかえもん」で三味線を弾いていた方です。
漫画と写真集
芸の道をゆく青年たちを描いた物語。完結しました。
5月の「妹背山婦女庭訓」でも可愛らしい雛鳥の人形を遣った、人間国宝の人形遣い、三世吉田蓑助の撮りおろし写真集。
戦時中、憑かれたように取り続けたという土門拳の文楽写真。いつか山形の土門拳記念館に行きたいと思っています。