最近、ビジネス書売場が元気です。『メモの魔力』と『FACTFULNESS』が連日のベストセラー1位争いを繰り広げている一方で、『嫌われる勇気』や『入社1年目の教科書』『人を動かす』といった新入社員、新人管理職向けの本もよく売れています。
ビジネス書という概念も変わりつつあります。今はビジネスパーソン向けのライフスタイル本に注目が集まっています。『トロント最高の医師が教える世界最新の太らないカラダ』のような実用書に分類されそうな本も「ビジネス書」として売れて行っています。人生100年時代に向け、頭と心だけでなく、カラダの事もしっかり気にするというビジネスパーソンが増えてきているという事でしょうか。
そんなビジネス書売場にまた注目の1冊が登場しました。それが『父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』です。
3月発売にもかかわらず着々と売上を伸ばし、ランキング順位も上昇中。ベストセラーの仲間入りするのももうすぐでは…という勢いです。
下記グラフは発売からの売上推移です(オープンネットワークWIN調べ)。大きなパブリシティはそれほど確認できない中、SNSやブログ、そして店頭のビジネス書担当者におすすめされることで大きな売上を作り出しています。
とはいえ、部数はまだまだなので、読者層がくっきり見えるまでには至っていません。発売からの読者クラスタはこちら。
『父が娘に~』というタイトルが示すとおり、父親世代(特に40代)の読者が最多。ですが、10代・20代にも手に取られているようです。経済の入門書として、常識確認のために、新入社員や就活中の学生さんにも読まれていきそう。
この読者の併読書を見ていきましょう。上位作品10作はこちら。
銘柄名 | 著訳者名 | 出版社 | |
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1 | 『FACTFULNESS』 | ハンス・ロスリング | 日経BP社 |
2 | 『お金の流れで読む日本と世界の未来』 | ジム・ロジャーズ | PHP研究所 |
3 | 『未来の年表』 | 河合雅司 | 講談社 |
4 | 『お金2.0』 | 佐藤航陽 | 幻冬舎 |
5 | 『日本史で学ぶ経済学』 | 横山和輝 | 東洋経済新報社 |
6 | 『官僚の掟』 | 佐藤優 | 朝日新聞出版 |
6 | 『牙を研げ』 | 佐藤優 | 講談社 |
6 | 『不死身の特攻兵 』 | 鴻上尚史 | 講談社 |
6 | 『新・日本の階級社会』 | 橋本健二 | 講談社 |
6 | 『日本の国難』 | 中原圭介 | 講談社 |
6 | 『サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい』 | 三戸政和 | 講談社 |
6 | 『武器としての経済学』 | 大前研一 | 小学館 |
6 | 『知らなきゃよかった予測不能時代の新・情報術 』 | 池上彰 | 文藝春秋 |
6 | 『日本再興戦略』 | 落合陽一 | 幻冬舎 |
6 | 『日本が売られる』 | 堤未果 | 幻冬舎 |
6 | 『江副浩正』 | 馬場マコト | 日経BP社 |
6 | 『残酷すぎる成功法則』 | エリック・バーカー | 飛鳥新社 |
今売れているということもあって、『FACTFULNESS』がぶっちぎりの1位を獲得。経済学入門系の本がその下に続いています。佐藤優の大きな推薦オビがついていることもあって、佐藤優の著書も多く見られました。今売れている『メモの魔力』が上位に入っていないというのも面白い点でした。
併読本の中から気になるものをいくつか紹介しましょう。
佐藤優が大絶賛という事であわせて購入されているのかもしれません。元は朝日新聞の連載。それが単行本となり、今回文庫化されたという1冊。彼を知る人へのインタビューという形でその姿を読み解いていくという本。単行本出版時にも話題になりましたが、より手に取りやすくなりました。
どうでもいい話ですが、最近売れているビジネス書はとにかく表紙に文字が多い傾向がありませんか?
それはさておき、この『西洋の自死』も世界的なベストセラー。日本社会も様々な問題を抱えていますが、ヨーロッパ大陸もこれを超えるような問題を抱え、社会は閉塞感に満ちているとこの本は提起しています。難民、移民問題を語るのはなぜタブー化されるようになったのか。人々は何をどう感じ、考え、行動しているのかを取材、分析した意欲的な1冊です。
ファストファッションブームはいつの間にか終焉を迎えていました。我々のクローゼットはITの進化によって大きく変わり、これからも大きな変化が見込まれているのだそう。アパレルというタイトルがついていますが、消費者行動を読み解くという視点で小売業界全般が参考にできる本として今話題になっています。
PDCAサイクルという考え方はもう古いものになっています。今の時代、広がりを見せているのがこのOODA LOOPという考え方。アメリカ海兵隊の行動基本原則で、観察→情勢判断→意思決定→行動というフェーズをループさせることで組織目標を達成する意思決定をしていくシステムです。今関連書も続々出版されています。どんな仕組み、組織にすればそれが回るようになるのか。今のリーダー必読の1冊でしょう。
そこそこの年月会社員をやっていると「唯一生き残るのは、変化できる者である」という進化論っぽい言葉を使ったプレゼンを何度か聞く羽目になるわけなのですが、だからこそ、この表紙の「逃げろ」という言葉に心をつかまれました。
実は、長い生命史を見ていくと残っているのは敗者のほう。滅び去ったのは強者のほう、だそうで、現在の我々はその敗者の進化の末路だということになるのだ。とこの本は説いています。じゃあなぜ敗者だったのに生き残れたのか、そのサバイバル方法に興味を持たずにはいられません。
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昔、ある人に言われた「ベストセラーは次のベストセラーを連れてくる。」という言葉をふと思い出しました。まさしく今の書店店頭はそんな状態になっているのかもしれません。新刊リストを見ても、ベストセラーランキングを見ても、紹介したい本が目白押し状態です。
この『父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、どんでもなくわかりやすい経済の話。』はどこまで売れるのか、表紙にいっぱい文字が並ぶ本が続く傾向はいつまで続くのか、その二点にもぜひご注目を!