いまや国民食となったラーメン。多くの人が、一度は病みつきになったラーメンがあるだろう。なぜ我々はそのラーメにはまったのか。麺の食感か、スープのうま味か、匂いか。なんとなく好きなのかもしれないが、そこにはおそらく本人も自覚していない理由があるだろう
そうなのだ。あのラーメン店に行列ができるのも、飲み会の帰りにラーメンを食べたくなるのも理由があるのだ。本書はその理由に科学の力で迫った一冊だ。「科学」というと仰々しいが、机上の分析ではなく、著者が足と舌を使いながら取材を重ね、専門家に意見を求める構成なのでぐいぐいと引き込まれる。
例えば、つけ麺。著者はつけ麺否定派で、「つけ麺がわからない」とぼやく。「おいしいおいしくない以前に、熱いか冷たいかはっきりしろ、と思ったー中略ーぬるいってなんだ、ぬるいって」。わかる、私も全く同じ意見だ。
著者はうまいつけ麺ならば違うかもと5時間待ちの名店でつけ麺を食す。おお、何だか違うと感動した著者は温度と味の関係について、取材を重ねる。温度によって味は変わるのだ。詳細は本書を読んで欲しいが、体温に近い方が味は強く感じる。ぬるくなったアイスコーヒーやジュースを甘ったるく感じたことはあるだろう。「ぬるいってなんだ」と憤っていた著者も、つけ麺はぬるくなくてはいけないことがわかる。つけめんに限らず、ぬるいラーメンはうまいのだ。知らなかったが、山形県ではラーメンを「熱い」と「ぬる」から選べるという。
熱狂的なファンがいるラーメン店「ラーメン二郎」の人気にも迫る。インターネットのファンサイトでは醤油が違う、麺が違うなど侃々諤々らしい。もちろんマーケティングの妙もあるだろうが、あくまでも科学的に解析する。著者が醤油の供給元に電話取材すると「ピンからキリだったらキリ」、「おしょうゆの縄文時代」となんとも自虐的な返答が。二郎の各店舗がそこにいろいろな調味料を配合しているらしいが、しょうゆ自体に大きな特徴はなかったのだ(現在は別会社の製品を使用しているとか)。
即席麺は体に悪いのか、飲んだ後になぜ食べたくなるかという古いながらも関心が持たれるテーマも調べている。後者に関しては、科学的には体が欲するニーズにこたえるにはラーメンでなくて、スポーツドリンクがいいとか。糖も塩分も水分も全部ある。確かに飲み過ぎるとスポーツドリンクを飲みたくなるが、酔って怪気炎を上げてラーメン食べる気満々の時にスポーツドリンクはちょっとつらいかも。