『AI vs.教科書が読めない子どもたち』がHONZのレビューをきっかけに大きく売上を伸ばしています。この本をはじめとして、昨年末からAI関連の書籍の点数が急激に増えてきています。成長著しい分野のため、読者が求めるのも最新の情報ということで、やはり新刊への注目度が高い模様。実際にどんな本が売れているのか、どんな方が買っているのか、今回はAI関連本について見ていきたいと思います。
一概にAI関連本といっても、新書から読み物、専門家や研究者向けの本格的な技術書までジャンルは様々です。オールジャンルでどんな本が売れているのか、2018年1月~2月13日までの売上からランキングを抽出してみました。(オープンネットワークWIN調べ:書名に関連ワードが入っている銘柄より抽出)
銘柄名 | 著訳者名 | 出版社 | |
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1 | 『超AI時代の生存戦略 』 | 落合陽一 | 大和書房 |
2 | 『人工知能と経済の未来』 | 井上智洋 | 文藝春秋 |
3 | 『棋士とAI』 | 王銘琬 | 岩波書店 |
4 | 『人工知能の核心』 | 羽生善治 | NHK出版 |
5 | 『AI vs.教科書が読めない子どもたち』 | 新井紀子 | 東洋経済新報社 |
6 | 『人工知能は人間を超えるか』 | 松尾豊 | KADOKAWA |
7 | 『人間の未来 AIの未来』 | 山中伸弥 | 講談社 |
8 | 『AIまるわかり』 | 古明地正俊 | 日本経済新聞出版社 |
9 | 『AI化する銀行』 | 長谷川貴博 | 幻冬舎 |
10 | 『AI時代の人生戦略』 | 成毛眞 | SBクリエイティブ |
11 | 『Excelでわかるディープラーニング超入門』 | 涌井良幸 | 技術評論社 |
12 | 『マンガでわかる人工知能』 | 三宅陽一郎 | 池田書店 |
13 | 『AIに心は宿るのか』 | 松原仁 | 集英社 |
14 | 『仕事ではじめる機械学習』 | 有賀康顕 | オーム社 |
15 | 『人工知能の「最適解」と人間の選択』 | NHKスペシャル取材班 | NHK出版 |
プログラミングや技術書も多く出版されている分野ですが、新書など一般の方にも手に取りやすいフォーマット、価格帯の銘柄が増えたことで上位には読み物が並びました。太字にしているのは18年に入ってからの発売銘柄ですが、それらの売上も好調、今後も新刊点数は増えていきそうです。
上記の15銘柄の今年1月以降の購入者クラスタがこちら
50代男性の突出と20代男性に比較的売れているというところが大きな特徴です。経営者、ビジネスパーソンの購入が目立ちますが、子育てをしている世代(特にお母さんたち)も多く手に取っているようです。
併読本は本によって様々。落合陽一ファンに支持されていたり、将棋ファンに買われていたりと著者の影響が大きく見られます。参考までに上記の上位2作品の併読本(1月以降の購入分)を比較してみたのがこちら。
『超AI時代の生存戦略』併読本 | ||
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1 | 『日本再興戦略』 | 落合陽一 |
2 | 『お金2.0』 | 佐藤航陽 |
3 | 『新・日本の階級社会』 | 橋本健二 |
4 | 『これからの世界をつくる仲間たちへ』 | 落合陽一 |
5 | 『日本を蝕む「極論」の正体』 | 古谷経衡 |
5 | 『Lily』 | 石田ゆり子 |
5 | 『メイキング・オブ・勉強の哲学』 | 千葉雅也 |
8 | 『日本史のツボ』 | 本郷和人 |
8 | 『オックスフォード&ケンブリッジ大学 世界一「考えさせられる」入試問題』 |
ジョン・ファーンドン |
8 | 『40代でシフトする働き方の極意』 | 佐藤優 |
「人工知能と経済の未来」併読本 | ||
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1 | 『文藝春秋 』 | |
2 | 『新・日本の階級社会』 | 橋本健二 |
3 | 『日本史の内幕』 | 磯田道史 |
4 | 『お金2.0』 | 佐藤航陽 |
5 | 『日本再興戦略』 | 落合陽一 |
6 | 『不死身の特攻兵』 | 鴻上尚史 |
6 | 『漫画 君たちはどう生きるか』 | 吉野源三郎 |
8 | 『日本史のツボ』 | 本郷和人 |
9 | 『広辞苑 普及版』 | 新村出 |
9 | 『入門ビットコインとブロックチェーン』 | 野口悠紀雄 |
働き方について考えるような本も多く読まれている他、今、同じく話題となっているのビットコインやブロックチェーン関連の書籍の併読も目立ちました。
ここからはAI関連の書籍を購入した読者の併読本リストから注目本を紹介していきます。
戦争の不安がつきまといながらも、世は世界的バブル。この世界はどこに向かって行くのか、エマニュエル・トッドをはじめとした世界の知性たちが今後の世界を読み解く、と言う1冊
イーロン・マスクの研究本、自伝は数も増えてきていますが、最新刊がこちら。先日、自らが起業したspace Xがロケットの打ち上げに成功し注目が集まっています。どんな人物なのか、何を目指しているのか、どんな思考法を取っているのか、それらすべてがわかる「イーロン・マスクの入門本」です。
以前新書で出ていた書籍の文庫版です。AI関連本の読者の併読本には、中野信子さんの著書など脳について考えた本も多く見られました。こちらは、脳は妙に酒が好き、だとか、ゲームにハマる、だとか、自分が好き、だとか。読んで自分で納得したいようなキーワードが並ぶ気になる本。
これに限らず、藤井本・将棋本にはこれまでにないほどの注目が集まっています。本の売れ行きについても羽生永世七冠と藤井六段が人気を二分。新刊の発売予定も続々と決まってきているようです。この本は師匠から見た藤井六段と言うちょっと趣向の変わった1冊。子育て世代が子育ての参考に、と購入して行くことも多いようです。
脳のことがわかってくるなら、その特性や効率を考えた勉強をすればいいわけで、そういった本が増えてきました。こちらは中野信子さん推薦。ちなみに、2015年末にも『脳が認める勉強法』と言う本が出ていました。こちらは池谷裕二さん推薦。ちょっと待てよ、勉強法があるなら、ダイエットも絶対あるなあと思ったらあるわあるわ…脳を騙したり、ダイエット脳を作ったり。脳の研究の進化は、他の問題にも多くの影響を及ぼしているようです。
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AIは驚異的なスピードで私たちの生活に入ってきました。それを楽しみに感じる人、不安に感じる人、興味を持つ人、感じ方は色々ですが、誰もが気になるのはAIが拓いていく未来の姿でしょう。また、この技術の発達は私たちに脳や心について深く考える機会を与えることになりそうです。技術進化はもちろんですが、今後どんな切り口の本が発売されていくのかも楽しみです。