HONZメンバー推薦! 人生で一番影響を受けた本

2017年4月6日 印刷向け表示
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

春の合宿を行った際、今までで一番影響を受けた本を紹介せよ!という命令が成毛眞より下った。下は大学生から上は還暦オーバー組まで、「本が好き」なのは変わらないが、幼いころから好きだった人、大人になって目覚めた人など、ひとそれぞれ。

♬育ってきた環境が違うから~♪というわけで、かなり個性的で興味深いラインナップになった。絶版本も多いけど、今の時代、図書館や古本屋さんでだいたい見つかります。新生活での読書ガイドとしてご利用ください。

成毛眞

毛沢東の大飢饉  史上最も悲惨で破壊的な人災 1958-1962

作者:フランク・ディケーター 翻訳:中川治子
出版社:草思社
発売日:2011-07-23
  • Amazon
  • honto
  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • HonyzClub

世界の歴史のなかで一番人を殺したのは毛沢東だと言われている。果てしない殺戮で4000万人を屠った。いまの中国人の性格はこの毛沢東時代に形成されたものではないか。中国を理解するために、この本は必読だ。

仲野徹

分子生物学の夜明け 上―生命の秘密に挑んだ人たち

作者:H.F.ジャドソン 翻訳:野田 春彦
出版社:東京化学同人
発売日:1982-02
  • Amazon
  • honto
  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • HonyzClub
  •  

1982年に出た上下巻本で理系を目指す大学生なら必読の書である。2重らせん、遺伝暗号解読、タンパク質の構造などを見つけた研修者たちへのインタビューがとにかく読ませる。「なぜ復刊しないのか、わからん!」と仲野は怒っていました。

鰐部祥平  

サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福

作者:ユヴァル・ノア・ハラリ 翻訳:柴田裕之
出版社:河出書房新社
発売日:2016-09-08
  • Amazon
  • Amazon Kindle
  • honto
  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • HonyzClub

昨年梓され、いまでも売れ続けているが、鰐部にとっては「歴史を俯瞰的に眺められ、知的訓練をされる楽しみをもたらしてくれる」本だという。鰐部のレビューはこちら

山本尚毅 

雪 (岩波文庫)

作者:中谷 宇吉郎
出版社:岩波書店
発売日:1994-10-17
  • Amazon
  • Amazon Kindle
  • honto
  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • HonyzClub

歴史的な名著である。科学を志す者、生業とする者は一度読むべきである1冊。雪ができるまでのプロセスを初めて明かした学者だが「人の役に立つ研究をせよ」という言葉が身に沁みる。*中谷宇吉郎とは

村上浩

ご冗談でしょう、ファインマンさん〈上〉 (岩波現代文庫)

作者:リチャード P. ファインマン 翻訳:大貫 昌子
出版社:岩波書店
発売日:2000-01-14
  • Amazon
  • Amazon Kindle
  • honto
  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • HonyzClub

天才的物理学者であるファインマンはファンキーな人だった。村上の大学時代、つまんない毎日を送っていた頃出会った本で、読み始めはつまらなかったのに、最後まで引き込まれ、そこから少しずつ自分が変わった気がする、とのこと。

 塩田春香

夜と霧 新版

作者:ヴィクトール・E・フランクル 翻訳:池田 香代子
出版社:みすず書房
発売日:2002-11-06
  • Amazon
  • Amazon Kindle
  • honto
  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • HonyzClub

ユダヤ人精神分析学者がみずからのナチス強制収容所体験をつづった名著である。塩田が入院を余儀なくされていた時、本書を手に取って「一生懸命生きよう」と決意したという。新版、読み直してみようかな。

峰尾健一

井田真木子 著作撰集

作者:井田真木子
出版社:里山社
発売日:2014-07-19
  • Amazon
  • honto
  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • HonyzClub

夭折したノンフィクション作家の作品集。「心が折れる」という慣用句は井田真木子が女子プロレスラーの神取忍のインタビュー時に引き出した言葉だそうだ。取材対象に迫る姿は鬼気迫るものがある。享年44。若すぎる死だった。

冬木糸一

膚(はだえ)の下

作者:神林 長平
出版社:早川書房
発売日:2004-04-23
  • Amazon
  • honto
  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • HonyzClub

今回は小説もOKとした。冬木がブログをはじめたきっかけともなった傑作SF。火星三部作の第三部。SF好きの成毛もこの小説家が大好きだという。冬木のブログ「基本読書」を参照してください。

栗下直也

誘拐 (ちくま文庫)

作者:本田 靖春
出版社:筑摩書房
発売日:2005-10-05
  • Amazon
  • Amazon Kindle
  • honto
  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • HonyzClub

年長のメンバーからは「ああ~」と声が出る。犯罪ノンフィクションの金字塔とも言われる作品で1963年に起こった「吉展ちゃん事件」の詳細なルポルタージュ。当時の刑事たちの必死の捜査が実を結んだ。今読んでも面白い。

小松聰子

抵抗の快楽―ポピュラーカルチャーの記号論 (SEKAISHISO SEMINAR)

作者:ジョン フィスク 翻訳:山本 雄二
出版社:世界思想社
発売日:1998-07
  • Amazon
  • honto
  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • HonyzClub

学生時代、クイズ王になりたかったのだという小松。その望みもうすれた頃、この本に出会った。知識とは何か、支配層が作った階級社会のなかで抵抗する者たちが作り上げた快楽を読み解く(ってさっぱりわからなかったのだけど…)

久保洋介

AK‐47世界を変えた銃

作者:ラリー カハナー 翻訳:小林 宏明
出版社:学習研究社
発売日:2009-04
  • Amazon
  • honto
  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • HonyzClub

社会人になって初めて読んだ本で、世界で怒っている紛争に対して啓蒙された一冊だそうだ。アサルト・ライフルAK‐47はミハイル・カラシニコフが開発。単純な構造で誰でもすぐに扱え、め故障せず、きわめて安価なのだ。ドキュメンタリ映画を作ってほしい。

刀根明日香

最近、本棚から取り出して読み返す確率が高い本だそうだ。自分ががさつなので緻密な人が好き。だから著者の計算しつくして食事をつくるという行為がたまらなくいい。「変わった人やで、天才だけど」と知人である仲野はそっけなかった。

篠原かをり

女の子よ銃を取れ

作者:雨宮 まみ
出版社:平凡社
発売日:2014-05-23
  • Amazon
  • Amazon Kindle
  • honto
  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • HonyzClub

昨年、惜しくも早逝した「こじらせ女子」の生みの親である作家で、共感する女子多し。篠原も「かわいいという価値観」に苦しめられた女子で、『強くなれ」というメッセージに共感したそうだ。

アーヤ藍

<トリイ・へイデン文庫>シーラという子–虐待されたある少女の物語 (ハヤカワ文庫 HB)” title=”<トリイ・へイデン文庫>シーラという子–虐待されたある少女の物語 (ハヤカワ文庫 HB)”></a></p>
<div class=
作者:トリイ・ヘイデン 翻訳:入江 真佐子
出版社:早川書房
発売日:2004-06-10
  • Amazon
  • Amazon Kindle
  • honto
  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • HonyzClub

子どもの虐待を赤裸々に描いた先駆的なノンフィクション。アーヤの初めて読んだノンフィクションでもある。弱者に対する視点を身に着けたことで、今の仕事に結びついているのだろう。日本の虐待の現状も、深刻になってきていると思う。

吉村博光


陽水の快楽―井上陽水論 (ちくま文庫)

作者:竹田 青嗣
出版社:筑摩書房
発売日:1999-03
  • Amazon
  • honto
  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • HonyzClub

吉村は陽水が大好きだという。でもなぜ自分がこんなに陽水が好きなのか、分析できなかったそうだ。本書は陽水を聞くきっかけとなった本で、彼の魅力を余すところなく表している。カラオケで歌う男性、多いよね。

古幡瑞穂

それから・門 (文春文庫)

作者:夏目 漱石
出版社:文藝春秋
発売日:2011-07-08
  • Amazon
  • honto
  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • HonyzClub

高校の教科書で読んだときに「なんでこの本が教科書に載るの?」と大きな疑問をもったそうだ。確かにね。ただ小説を読む、という面白さを教えてくれた本でもあるようだ。ニートだのモラトリアムだの言ってい現代にはぴったりなのかも。

田中大輔  

路上 (河出文庫 505A)

作者:ジャック・ケルアック 翻訳:福田 実
出版社:河出書房新社
発売日:1983-02-04
  • Amazon
  • honto
  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • HonyzClub

新版は『オン・ザ・ロード』で出てます。昔「ケルアック」という雑誌がありかなり影響を受けた田中大輔。その雑誌とこの本から「好きなことをやってみよう!」」と大学進学を取りやめた。現代のアメリカの原点だと思っている。

新井文月

弓と禅

作者:オイゲン・ヘリゲル 翻訳:稲富 栄次郎
出版社:福村出版
発売日:1981-11
  • Amazon
  • honto
  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • HonyzClub

時代は大正の終わりごろ、弓道を極めたいというドイツ人と師匠である日本人との会話のノンフィクション。新井も弓道部だったので必死に理解しようとしたらしい。無の境地を目指す人の入門書。

首藤淳哉

史上初めて戦場がテレビ中継されたのがヴェトナム戦争だった。アメリカの戦争のイメージを植え付けたこの戦いが、いまでも引きずられている。二十世紀文化の核心を読むことで、今の状況までも読み解くことができる。

内藤順

キュレーションの時代 「つながり」の情報革命が始まる (ちくま新書)

作者:佐々木 俊尚
出版社:筑摩書房
発売日:2011-02-09
  • Amazon
  • honto
  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • HonyzClub

もともとあまり本は読んでいなかったという内藤だが、著者の佐々木俊尚さんの講演を聞いて、自分もキュレーションをしてみようと思ったそうだ。HONZ発足のときも、この本がとても参考になった。本とは面白いものだ、と感じるきっかけになった一冊。

堀川大樹

夢のなか―連続幼女殺害事件被告の告白

作者:宮崎 勤
出版社:創出版
発売日:1998-12
  • Amazon
  • honto
  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • HonyzClub

東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件の犯人、宮崎勤が書いた自伝と告白。あまりにも理解できず、気持ちが悪くて忘れられられないそうだ。当時、私も読んだが、どこかで修正がきいたのではないかと強く思った。犯罪者は誰でもそうかもしれないが。

足立真穂

新版 指輪物語〈1〉旅の仲間 上1 (評論社文庫)

作者:J.R.R. トールキン 翻訳:瀬田 貞二
出版社:評論社
発売日:1992-07
  • Amazon
  • honto
  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • HonyzClub

人世を変えた本は数多くあれど、読み返している回数ではこれが一番かと。ピーター・ジャクソンの映画も好きです。小さいころから本が好きな人は定番かもしれない。

麻木 久仁子

橋をかける (文春文庫)

作者:美智子
出版社:文藝春秋
発売日:2009-04-10
  • Amazon
  • honto
  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • HonyzClub

美智子皇后が、1998年インドで開催された国際児童図書評議会世界大会に寄せたビデオによる基調講演の原稿です。美智子様の凜とした人格が形成される過程でどんな読書体験があったのか、率直に語られています。この本を読んだとき、自分の読書体験を振り返ると同時に、当時幼かった我が娘にも、本に触れながら成長する環境を与えてやらなくてはと思いました。
「読書は、人生の全てが、決して単純ではないことを教えてくれました、私たちは複雑さに耐えて生きていかなければならないということ。、人と人との関係においても。国と国との関係においても。」このくだりは、いまも常に、勇気を与えてくれる一文となっています。(麻木さんのコメントそのままです)

東 えりか

生と死の境界線―「最後の自由」を生きる

作者:岩井 寛
出版社:講談社
発売日:1988-06
  • Amazon
  • honto
  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • HonyzClub

著者は森田療法の研究者である精神科医。55歳で末期癌にかかり、死の瀬戸際までモルヒネなど使わず意識を清明に保ち、自分が見聞きしたこと考えたことを口述筆記し続けた驚愕の一冊。聞き役であり本書をまとめたのが若き松岡正剛氏。「意識はなにものか」「身体と精神は切り離されるか」という根源的な問いを模索し続けた本。今でも時々夢に出てくる。

夏目漱石から昨年の『サピエンス全史』まで、バラエティに富んだラインナップとなりました。今日読んだ本が人生を変えるかもしれないし、まだまだ素晴らしい本に出会うかもしれません。でも読まなきゃ始まらないし、わからない。少しでも参考になったらいいな、と思います。

「HONZ」はたくさんの面白いノンフィクションを紹介していきます。 

決定版-HONZが選んだノンフィクション (単行本)
作者:成毛 眞
出版社:中央公論新社
発売日:2021-07-07
  • Amazon
  • honto
  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • HonyzClub

『決定版-HONZが選んだノンフィクション』発売されました!