著者の木下斉さんは「まちビジネス事業家」であり「地域経済評論家」である。16歳の若さで早稲田の商店会活性化に取り組んだのを皮切りに、以来18年、日本各地で地域活性化事業に取り組んできた。
木下さんが携わった事業のなかでも知られているのが、岩手県紫波町のオガールプロジェクトである。図書館など公共の施設を集客装置と位置づけ、それに民間の施設をドッキングさせ、民間の商業施設の稼ぎで全体の維持費を捻出する。民間商業施設については補助金を受けず、金融審査を受けた事業として採算の取れる適正な規模で行うというものだ。現在、オガールプラザは黒字、紫波町の財政も好転しているという。
地域活性化とは「稼ぐこと」であり、地域活性化を牽引する人材というのは「地域を稼げるようにできる人材」であるということです
補助金ありきの甘い見通しの事業は、地域を活性化させるどころか衰退のスピードを速めてしまうことすらある。しかし、地域にとって本当に価値のある必要なことならば必ず対価が払われ、補助金なしでも事業化できると木下さんは言う。稼ぐということに真摯に向き合って、安直に税金に頼ることをしない。それでこそ本当に必要なものが生み出されるのだ。
この本には、地域活動に一メンバーとして加わるところから、マネジャーとして参加者を率い、「活動」を「事業」にしていくための方法論まで、具体的に書かれている。新しいプロジェクトを立ち上げていくときの思考方法や、人々を説得するための極意、そして実践のプロセスの中でいかに自分自身を成長させるか等々多岐にわたる。
地域活性化に取り組みたいと希望する人のみならず、「自分自身の人生を活性化させたい」と思う多くの人にとってまさに「使える本」なのである。読後には勇気がわいてくる一冊だ。
※産経新聞書評倶楽部から転載