タイトルの「されど」が良い。人には仕事や趣味、家庭、習い事などいろいろあり、エロは「しょせんエロ」とされがちだ。だが、結局、人生はエロに行き着く。エロは人生の主食にはならなくても、副菜ではないのだ。
週刊文春の人気連載コーナーの書籍化第二弾。大概、シリーズものの第二作は映画にせよドラマにせよ小説にせよコケる。連載物の書籍化も勢いが落ちるのが定番だが本書はそうした常識を覆す。エロは青年期よりも壮年期の方がねちっこいように、エロエッセーも粘りをますのだろう。
目次を眺めただけでも直球から変化球まで硬軟の混じり方は前作を超す。「僕のマイボール問題」、「言葉責めのヒッヒッヒ」、「中出し感謝祭」、「肉体関係者席」、「007は二度イク」。
全てのエッセーが「人生の3分の2はいやらしいことを考えてきた」で始まる。その数、80。圧巻だ。
著者はふとした光景から日常に潜むエロを切り取る。
ボウリング場で婦人たちのマイボール談義を聞き、自分のマイボール事情に思いを巡らす。「タマ」は転がすや突くが用例でナメるなんて活用は大人になってから知ったなとぼんやり振り返る。
熟女物のエロDVDの購入時に四十路妻から五十路妻への一線を越えようか逡巡していたとき、店内で流れていたJ-WAVEに出演していたミュージシャンの「人生で一番大切なものはチャレンジ精神」の一言で大決断を下してしまう。まるでルビコン川を渡るように。
往年のヒット曲『ベッドで煙草を吸わないで』から、男がベッドで煙草を吸う理由を想起する。一回の行為は100メートル全力ダッシュと同じとの都市伝説を引用し、疲労困憊振りを伝えるために煙草を吸ったと居酒屋で力説するも、「僕は吸いながらやる派です」と異論を唱えられ、激論する。
確かに、僕らはふとしたきっかけで、エロいことを頭に浮かべる。穴埋めクイズ問題で「秘○」「○秘」のように上か下かに秘が付く漢字を答えよと尋ねられたら、つい「秘唇」と答えかねないと著者は語るが、誰にもそのような恥ずかしい思いがあるはずだ。
もちろん、本書の中には直球過ぎるエロエッセーもあるし、著者のみうらじゅん氏が佐村河内氏や片山さつきさんに間違われるような、全くエロくないエピソードもある。
人生80年。「死ぬまで頑張れ」と最近の週刊誌がおやじたちを焚きつけるのは異常にしても、「お茶は出がらしになってもエロは出がらしには決してならない」という迷言もある。エロはやはり、「たかが」と括ってはいけない存在なのだ。
レビューはこちらから。なんだかやたらにテンション高く、書いています。