野生動物の世界は弱肉強食の世界でもあり、時には一口の食べ物も見つけられない場合もあり、身を寄せ合っても耐えれない寒い冬だってある。動物たちは大変厳しい環境を精一杯生き抜いているが、それでも緊張や恐怖から解き放たれて優しい表情を見せる瞬間がある。
本書は世界中の動物たちのしあわせな瞬間を集めた写真集だ。著者が求めたのは弱肉強食の世界に生きる動物ではなく、見ている人々の心をほっこりさせてしまう動物たちのしあわせな姿。
著者は写真家の福田幸広。動物たちのしあわせな瞬間を求めるとはいえ、もちろんたやすく立ち会えるはずもない。一瞬の表情を捉えるためには、膨大な時間を動物たちと同じ環境化で過ごさなければならない。
進出鬼没のオコジョを撮影するため著者は雪深い山中で根気強く待機。とつぜん現れたその顔は、「あれ?いたの?」といわんばかりにぺろっと舌を出していた。
動物たちは人間と同じように、親子で寄り添い、遊び、眠り、恋をする。明るい写真に添えられた文章も魅力的だ。ページをめくるたび心がほっとして、だんだんと心地良い幸福感に満たされていく。
母ウマの食事中、子ウマはのんびりお昼寝タイム。まどろむ姿を見ていると、こちらまで眠くなってくる。
野生のうさぎが多数生息する『うさぎ島』。瀬戸内海に浮かぶ小さな島・大久野島は、野生のうさぎが多数生息するため『うさぎ島』と呼ばれる。ペットを飼う人たちが、自分のペットの一番かわいい姿を充分知っているように、著者にとってはうさぎの撮影はお手のものである。彼等は斜めの場所で眠っていたため、2匹がだんだんと右端のうさぎにもたれかかっている。若干寝苦しそうに見えるのもご愛嬌。
親ペンギンについていくヒナ。ヒナなのに親の倍はあろうかという胴回り。きっと親からたっぷりと食べ物をもらったのだろう。このヒナは約10ヶ月ほど。親は運動不足解消のため、こうしてエクササイズウォークに連れ出すらしい。そういえばお腹まわりが気になるのは、私も同じではないか。
著者のレンズを通して動物界をのぞいてみれば、地球はなんと彩り豊かな生き物に溢れているのだろうかと思う。もし生き物がデザインされているとしたら、創造主は間違いなく最高のクリエイターだろう。
表情筋の構造から動物は笑わないという説もある。しかし、この写真は明らかに笑っているように見えるではないか。どうせ同じ顔なら、まわりも笑顔になってしまうほうがずっといい。
本書はナショナル・ジオグラフィック特有のハイクオリティな写真を、どのページからでも堪能できる。動物・自然好きにはたまらない。彼等の姿から、生命の素晴らしさを見つめなおすことができる至福の1冊。