この本は、2013年11月に河出書房新社から出版された『世界一素朴な質問 宇宙一美しい答え』の続編です。編者も同じジェンマ・エルウィン・ハリスで、同じようにイギリスの子どもたちからの質問に、各分野の第一人者が回答を寄せています。そして同じように、子どもたちがひとりで読めるやさしい文章で書かれていますが、おとなが質問にそなえて、あるいは忙しさにまぎれて見すごしていたまわりの世界の不思議にもういちど目をむけて楽しむために、読むこともできます。日本語版だけに加えられているタイマタカシさんの美しいイラストも、ふたたび楽しんでいただけます。
本の構成でわずかにちがっている点として、まず質問した子どもたちの名前と年齢があきらかになっていることがあげられます。これだけで質問がより身近に感じられるのが不思議です。この本を読む子どもたちは、自分と同じ年齢の子どもの質問には、とくに興味がわくかもしれません。
また答える側のおとなにとっても、答える相手を想像する目安になります。「毎日が夢のなかのできごとではないと、どうしてわかる?」、「人間はなんのために生きているの?」、という鋭い質問がどちらも五歳の子どもからのものだとわかると、相手が小さくてもその質問に答えるむずかしさを実感します。そして「宇宙には行き止まりがある?」、「お金はどんどん印刷できるのに、どうして不景気があるの?」、「小惑星が地球に衝突するのをどうすればとめられる?」などは、高学年の子どもたちからの、おとなでも専門家にたずねたくなるような質問です。
もうひとつのちがいは、最後にクイズ形式の質問と答えがたくさんのっていることです。クイズ1から8までにそれぞれ8つ、ぜんぶで64の質問に、それぞれ3つの答えから正しいと思うものを選ぶ形式で、すぐあとに答えと説明があります。質問した子どもの名前と年齢はわかりますが、回答者の名前はなく、短くて要点をとらえた解説になっています。おとなも子どもも身のまわりのことをよりよく、より正しく理解するために、そうしながら友だちやきょうだいや家の人たちと遊んで楽しむために、クイズが大活躍することでしょう。
この本の原書はイギリスの本で、すべての質問と答えを省略することなく訳しているために、日本の子どもたちにはあまりなじみのない質問や知識も含まれています。たとえば、「ウィンストン・チャーチルはイギリスのためになにをした?」、「ヴァイキングとケルト人では、どっちのほうがおそろしかった?」などは、質問からイメージをふくらませることがむずかしいかもしれません。
また、「イアン・フレミングはどうやってジェームズ・ボンドを考えだしたの?」は、子どもたちよりおとなが興味をそそられる質問ではないでしょうか。それでも、子どもたちが今すぐ読んでピンとこなくても、学年が進んで世界史を勉強するときに、「ああ、あのときあの本で読んだ……」と思いだしてもらえたり、家の人に歴史や映画の話をたずねて会話をはじめるきっかけになったりすれば、これらの質問もおおいに役立つと考えています。
この本を読む前とあととで、まわりの世界を見る目が少しでも変化したと感じていただけることを、訳者として心から願っています。
2015年9月 西田 美緒子