『ヤンキー経済学』はマイルドヤンキーに読まれていない。『地方消滅』は東北地方でよく読まれている…などという話をしているうちに『美貌格差』という本が出てきました。HONZでもレビューされ、話題になっています。(※レビューはこちらとこちら)
書店で、レジに持って行く際にちょっとひっかかりのあるこのタイトル、こういう本を見つけると「誰が買っているのだろう」と考えずにはいられません。
この本はまだサンプル数が少ないため、いつものグラフではなく男女を合算し年代別に並べてみました。もともと経済学の分野に属する本であることもあり、経済・ビジネスの棚に並んでいる書店さんも多そうです。そういった理由もあってか、男性が70%を占めています。中でも40代、50代のいわゆる管理職世代が多いようです。
一方で、女性読者は比較的若年層にいます。特に就職活動中の世代に手に取られていたのが興味深い結果でした。
それでは併読本を見ていきましょう。『美貌格差』を購入した方がこの1年間に読んだ本の上位作品は以下の通りです。
RANK | 銘柄名 | 著訳者名 | 出版社 |
1 | 『セックスと恋愛の経済学』 | マリナ・アドシェイド | 東洋経済新報社 |
2 |
『進化とは何か』
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リチャード・ドーキンス | 早川書房 |
2 | 『こうして、思考は現実になる』 | パム・グラウト | サンマーク |
4 | 『沈みゆく大国アメリカ』 | 堤 未果 | 集英社 |
4 | 『依存症ビジネス』 | ダミアン・トンプソン | ダイヤモンド社 |
4 | 『日本人のためのピケティ入門』 | 池田 信夫 | 東洋経済新報社 |
4 | 『東大首席弁護士が教える 超速「7回読み」勉強法』 |
山口 真由 | PHP研究所 |
ざっと眺めて見ると、進化論や脳科学などに興味がある読者と社会・経済に興味がある読者に大別されるようです。『美貌格差』を読んでいるからといって、容貌に対して何らかのコンプレックスを抱えていたり、克服のために美容書を読みまくっていたりという読者の姿は見えてきません。
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この読者の併読書は非常にバラエティに富んでおり、ランキングだけでも立派なブックガイドのようでした。ブックリストの中から、今後注目されるだろう何点かをご紹介していきたいと思います。
『美貌格差』同様、見た目から生じる差について分析した本がこちら。これも翻訳物ですが、欧米の方がこういったテーマに興味を持つ方が多いのでしょうか?著者は人の将来を見抜くための手がかりの研究をしており、卒業アルバムの写真というのはその一つ。企業のCEOの顔写真だけで会社の業績がわかってしまうし、選挙結果も写真からわかるのだとか。私、卒業アルバムの写真を高熱の中で撮ったため開きたくないような酷い顔をしているのです。将来をどう分析されるのか…あまり考えたくありません。
小説を読んでいても、人の心を読める超能力を持っている登場人物は割と苦労や苦悩が多い役回りが振られている気がします。そんな刷り込みがあってなのか、私は「人の心が読めた方がいいな」と思ったことそのものがありません。とはいえ、豊かな人間関係を築くためには相手の気持ちを慮る事が絶対必要でしょう。一方、脳は相手の気持ちを読み違えるような罠を仕掛けているのだそうです。そういったメカニズムを明らかにしたのがこの本。
ピケティブームに沸いていた1月、実はこんな壮大な本も出版されていました。『21世紀の歴史』の著者、ジャック・アタリがユダヤ人を導いてきた教えと知恵を紐解いた著書。苦難の出来事に巻き込まれ続けながらも、ユダヤ人は世界中で活躍し続けていました。人類の歴史であると同時に、資本主義の歴史にとっても大きな存在の秘密が明らかになるかもしれません。
著者は『世界がもし100人の村だったら』の原案となるコラムを執筆した人物だそうです。タイトルだけを見るとIT系の話に見えますが、思考法の本。物事の大局と本質の見極め方が書かれています。
ダントツで併読されていたのがこちら。その昔(いつの昔だ)大学生というのは、その時代に応じて旬な雑誌を恋愛バイブルとして青春を謳歌していました。あの店に行けばどうだとか、こういう服を着ればこうだとか。そういった思いこみ(ブームを作り出す側の意図もあったでしょう)を学問的に検証したのがこの本。あくまで海外での研究報告なので、翻訳だけでなく「日本版」の研究や出版も期待したいところです。
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最初は「脳科学や心理学関連書売り場に置くのが良いのだろうな」と思っていました、しかし購買者や併読データを見ていて、この本への見方が変わってきました。この本の読者はまだそう多くなく、データによる客観的な分析が好きな方に読まれているところに留まっていると見て取れます。これを読んで一喜一憂するのも悪くはありませんが、現実を知って「容姿」がもたらす経済的な恩恵を受けること出来るはずです。経営者を目指す方たちにこそ読んで欲しい1冊です。