『友達の数で寿命は決まる』とは、なんとも気になるタイトルではないか。友達が少ない私のような人間は長生きができないのか?そんな不安からこの本を手にとった。どうやら人間関係というのは、人々が思っている以上に健康に大きな影響を与えているようだ。
今年ブームとなったアドラーは「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」と断言していた。対人関係は悩みだけでなく、人の寿命にも影響しているというのはいったいどういうことだろうか。食生活や、運動よりも健康にとって大切なのは「つながり」なんだそうだ。
最新の予防医学が実証した「つながり」のちからには以下の様なものがある。
・ 「つながり」が少ない人は死亡率が2倍になる。
・ 同僚があなたの寿命を決めている
・ 「つながり」が単調な男子校出身者は早死する。
・ お見舞いに来てくれる人の数で余命が変わる。
これらはすべてビッグデータを分析して割りだされたものだ。メタアナリシス(メタ解析)を元に、20世紀と21世紀に行われた148の研究(約30万人分のデータ)から、一番寿命に影響を与えているものはなにかを調べたところ、喫煙や飲酒、運動や肥満よりも「つながり」が一番重要だということがわかったそうだ。孤独は喫煙よりも健康に悪いのだ。
またこんなデータもある。急性心筋梗塞の治療を受けた人を対象にお見舞いに来てくれる人の数と、6か月以内の死亡率を調べた結果、誰もお見舞いに来てくれない患者の70%が亡くなったのに対し、2人以上お見舞いに来てくれた人の死亡率は26%にとどまったそうだ。これは臨床医の間ではよく知られている事実で、お見舞いに来てくれる人がいない患者は予後が悪いケースが多いという。自分が入院したときに2人以上お見舞いに来てくれるだろうか?と考えたとき、思い当たる人がいない人は要注意である。
介護に関する話も興味深い。男性の場合、息子の嫁に介護されると亡くなる確率が低くなるそうだ。逆に嫁に介護されると寿命が短くなるというから恐ろしい。女性の場合は夫に介護されるのが一番長生きで、息子の嫁に介護されると寿命が短くなるという。詳しい理由はよくわかっていないとのことだが、統計データからはこのような結果がでているので、もし自分に介護が必要になったときは、参考にした方がいいだろう。
ではどのようなつながりをもつのが健康にはいいのだろうか?著者は質よりも量を重視すべきだといっている。いまあるつながりをメンテナンスしてキープすることはもちろんのこと、趣味やボランティアなどで多種多様なつながりをもつといいそうだ。コミュニティに入る場合はなんらかの責任のある立場で参加するとよりよいという。
男性は女性に比べるとつながりを作るのが下手である。もしかするとそれが、男女間の寿命の差になっているのかもしれないとこの本を読んで思った。統計から割りだされている嘘みたいな本当の話。信じるも信じないもあなた次第。