日銀の黒田東彦総裁がデフレマインドからの脱却を試み、異次元緩和の2弾目を唱えたせいで日経平均は17,000円代となった。2009年のリーマンショックから、再び驚くべき上昇を見せている。黒田氏は為替を意識したものではなく、国内経済のことだけを考えて緩和をした、と主張した。
日本の未来は非常に不透明と言われ続けたが、その結果、世の中にはファイナンスに関する本が無数に登場した。金融に関する興味がある人は21世紀の自己責任の時代をサバイブするにあたり、すでにその知識を身につけている人も多く、いよいよ金融の知識がない若者も、苦手だからや面倒だからと言ってはいられなくなってきたのではないか。ちなみに私も資産運用に興味はあるが、実際に何も動いていなかった。
このままではいけない、と漠然とした焦燥感から、暮らしの中で役立つ金融知識(マネー知識)をワンストップで提供してくれるような、しかも数冊分程度のエッセンスが凝縮する本なぞはないかと探してきた。本書を知る人は多いかと思われるが、元となったのは2002年に発売された『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』である。この本は売れに売れ、ベストセラーとなった。この本を読んで触発され、会社を辞めて今は赤坂にビルを3棟持っています、など経済的独立を手にした人も現れているほどだ。そして今回は2015年の全面改訂版である。
タイトルはビジネス書にありがちな誇大表現かもしれず、この時点で避ける人がいるかもしれない。ただ、それでも中身は論理的かつ合理的に資産を増やす方法を導いており、著者が誠実な情報源を提供してくれている内容だとわかる。
というのも橘氏の文体は、難しい金融の話も丁寧かつ初心者に噛み砕いて話せる構成となっており、読んでいるとファイナンシャルプランナーのコンシェルジュか?と思わせる印象を受けるためだ。いっぽうその手段は合理性を追求しており、中には個人事業主と株式会社の特性を活かし、限りなく課税所得を減らすマイクロ法人の設立など税法に触れない範囲で資産を増やす方法もさらりと紹介している。
項目内容を以下にあげてみる。
株式投資/不動産投資/マイホーム取得/保険
法人と個人事業主の使い分け/マイクロ法人を使った節税/税務署と税理士の関係
かつ気になるトピックスはこんな調子である。
・誰でも億万長者になれる残酷な世界
・サラリーマンが金持ちになる方法は3つある
・短期投資は最高のギャンブルである
・30年後に手に入った「我が家」に価値はない
・課税所得をゼロにする
・新宿中央公園のホームレス
最後のトピックスは前回も大反響だったエピローグだ。こちらもそのままに掲載されているのが、この章だけは人間の闇の部分を描いた映画を見ているような気分になる。
実は読み進めると淡々と、あまりにあっけらかんと資産を増やす説明が続くので、うっかりサラリーマンが読めば「これまで何のためにがんばってきたのだ」と無力感にとらわれるかもしれない。それだけ金融リテラシーが無い人にとっては衝撃的だからだ。
筆者は「国家とは人生を最適設計するための道具にすぎない」と語る。確かにマネー・ルールの知識を持てば、搾取される側から離れることができるかもしれない。さらに「東日本大震災と福島の原発事故が起き、日本の社会が大きく変化したように見えても、じつは制度の歪みはほとんどそのまま温存されている」ともある。
生きていく上での幸せの判断基準は、もちろん資産がすべてではないことは重々承知である。家族や友人と共に過ごす時間、なにより金を越えた信頼が大切ではないか。ただ資産が無いことで、その大切な人達ともトラブルを生み関係性が崩れる可能性もある。
資本を増やすルールは、言ってしまえばいたってシンプルで、リスクを取り市場に資本を投資し、リターンを得る行動をとるかどうかだ。最終的な判断は本人次第だが、最低限の資産形成に役立つ知識だけは本書で充分得ることができる。