「女子だって官能小説を楽しもう!」「「官能」は、働く女性のサプリメント」。
「朝日新聞」3月4日付に「女性だって 見たい読みたい」と題して、「おしゃれも仕事も大切、エロスだって忘れない——頑張る女性のためのサプリメント」としての「官能」ジャンルを紹介していて、女性のための官能小説は新レーベルの創刊が相次いでいることもレポートしていた。
続いて4月20日付「東京新聞」では、「女心くすぐる官能小説」と題して大きく取り上げ、「ソフトな描写にときめき」「活力得るアイテムに」とブームを報じている。
そう! 時代はまさに「女性が楽しむ官能小説」なのだ。
著者いしいのりえさんは、官能小説ファンならば文庫本のカバーイラストでおなじみだろう。「エロかわ」をキーワードにした上品なエロスがただようイラストを見れば、「あ、あのイラストだ!」と気づくことだろう。最近のイラスト作品も見てほしい。
いしいさんは、官能小説をとにかくよく読む。その数300作品。これまでのディープな経験に基づいてセレクトした60作は、「読みたい!」という衝動を高揚させる内容でツボを紹介している。
第1章「ラブ」ではさまざまな性愛を紹介し、第2章「女」では、女の性の奥の深さをえぐり出し、定番の「人妻」の章では……これはもう読んでもらうしかない。「SM」「ちょいエロ」と続けて読めば、フツーのセックスのリアル、セックスだけではない性愛のカタチ、アブノーマルな性癖、危険な性関係などのなかから、お好みの作品がきっと見つかることだろう。
また、官能小説だけではなく、いわゆる一般文芸でエロス漂う作品も紹介している。例えば、直木賞作家・重松清の『海の見えるホテル』、辻仁成の『サヨナライツカ』、岩井志麻子『チャイ・コイ』、板東眞砂子『放っておいて、握りしめて』、小川洋子『ホテル・アイリス』……どうです、読みたくなったでしょう?
実はいしいさんはイラストレーターが本職。官能小説のカバーイラストを描く際に小説の本文を読んでイメージを作る。毎月数本の本文を読んでいるうちに官能小説の世界にどっぷりとはまり、ついには官能小説のレビューを書くまでに至った、という次第だ。
食わず嫌いではなく、まず“食感”を確かめて、“豊かな味覚”をじっくりと味わってほしい。
最近編集した書籍は『ゲームシナリオを書こう!』『秘宝館という文化装置』『「愛国」の技法』『世界文学をDVD映画で楽しもう!』など、近刊は『編集者になろう!』『出版産業の変貌を追う』など。まさに、あれもこれもの毎日。