【連載】『第五の権力 Googleには見えている未来』第5回 グーグルの未来予測。2025年、デジタル新時代はテクノロジーではなく「人間」の時代になる

2014年3月28日 印刷向け表示
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グーグル会長・エリック・シュミット氏初の著書として全米ベストセラーとなった書籍『第五の権力―Googleには見えている未来』。最終回である第5回は、著者たちが思い描く未来について。

第五の権力---Googleには見えている未来

作者:エリック・シュミット、ジャレッド・コーエン
出版社:ダイヤモンド社
発売日:2014-02-21
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グーグル、フェイスブック、アマゾン、アップルは強力な存在

グーグル、フェイスブック、アマゾン、アップルなどの最先端の技術プラットフォームは、世の中の人たちが思っている以上に強力だということ、またこれらプラットフォームがさまざまな社会に普及し、成功を収めるうちに、世界が根底から変わることを、私たちは確信している。

こうしたプラットフォームは、テレビの発明にも似た、正真正銘のパラダイムシフトを起こしている。

なぜそれほどまでに強力な力をもっているかといえば、その成長力、具体的にいえばプラットフォームが拡大するスピードがこの上なく速いからである。

これほど急速に、効率的に、また強引に広がる力をもっているの は、生物学的ウイルスくらいのものだ。そのため、プラットフォームを構築し、支配し、利用する人たちまでもが、力をもつようになる。

これほど多くの人が、瞬時に反応するネットワークでつながったのは、人類史上初めてのことである。

消費者、制作者、篤志家、活動家などが、共通のオンラインプラットフォームを介して力を合わせられるようになれば、社会のあり方が根底から変わるだろう。クチコミで爆発的に広まる人気音楽ビデオや、国際的なeコマース(電子商取引)のプラットフォームなど、私たちが知っている「スケール効果」は、これから起こることのほんの予兆でしかない。
 

未来予測に欠かせないのは「技術がもたらす変化」の把握

デジタル新時代には、こうしたプラットフォームのスケール効果のおかげで、ものごとの進み方が今よりずっと速くなるだろう。このことは政治、経済、メディア、ビジネス、社会規範など、社会のあらゆる側面に対して重要な意味をもつようになる。

このスケール効果と、インターネット技術が生み出す「すべての人とつながっている」という感覚とが合わさったときにこそ、グローバリゼーションの新時代が始まるだろう。それはすなわち、製品とアイデアのグローバリゼーションである。

テクノロジー業界の生み出す製品・サービスが、人々の暮らしや社会に与える影響を、余すことなく誠実に検証することは、業界の一員としての私たちの使命である。

なぜなら今後政府は、ますます速いペースで行動し、ときには法が追いつけないほどの速さで境界を越えていく個人や企業と一緒になって、ルールづくりを進めなくてはならないからだ。

個人や企業が立ち上げるデジタルプラットフォーム、ネットワーク、製品は、ケタ外れに大きな影響を地球規模で及ぼしている。したがって、政治、ビジネス、外交といった重要な分野の未来を予測するには、各分野で技術がどのような形で重要な変化をもたらしているのかを、きちんと理解する必要がある。

私たちが思い描く未来とは

偶然にも、私たちが未来について意見を交換し始めた矢先に、ちょうど議論していた問題を端的に表すような大きな事件が立て続けに起こり、世界中の注目を集めた。

中国政府が、グーグルをはじめとする数十社のアメリカ企業に、高度なサイバー攻撃を仕掛けたのもそのひとつ。また、ウィキリークスが華々しく登場し、数十万点もの電子化された機密情報を、誰にでもアクセスできるようにしたのもそうだ。

大震災が日本とハイチを襲い、都市を破壊したが、技術を駆使した革新的な対応が講じられたことに勇気づけられた。

「アラブの春」では、SNSを通じて多くの市民が立ち上がり、あっというまに革命が伝染したことに、世界中の人々がおののいた。
このような動きの1つひとつが、未来について考えるための新しい視点や可能性を示してくれたのである。

私たちは多くの時間を費やして、こうしたできごとの意味や影響について議論し、傾向を分析し、技術を利用して問題を解決する方法について考えた。本書はこのようなやりとりのなかから生まれた。
 

変化は避けられないがコントロールはできる

各章では、私たちが思い描く未来を説明しよう。

未来は市民権や国家のあり方、プライバシー、戦争といった地球規模の複雑な問題が山積し、世界に広がるコネクティビティによって厄介な問題をもたらされるとともに、解決策をも与えてくれる世界である。

また本書では、今後大量に出現する新しい技術やツールを正しく導いて、世界に情報を与え、世界をよりよく、より豊かにするにはどうすればよいか、その方法を随所で示している。

技術がもたらす変化を避けることはできないが、その進み具合を段階ごとにある程度コントロールすることはできるはずだ。

これから紹介する未来予測には、あなたが前からそうなるのではないかとうすうす感じながらも、恐ろしくて受け入れられなかったもの(たとえば商用無人機による自動戦争など)もあれば、想像もしなかったものもあるだろう。私たちの予測や提案を楽しみ、考えるきっかけにしてもらえたら嬉しい。
 

未来は、テクノロジーではなく「人間」の時代である

本書は、ガジェットやスマートフォンのアプリケーション、人工知能などを説明する本ではない。もちろん、こうしたテーマも取り上げはするが、それがメインではない。本書は、技術に関する本だ。

だがさらに重要なこととして、本書は人間に関する本であり、人間がそれぞれの環境のなかで、今まで、そしてこれからどのように技術と関わり合い、どのように技術を導入、適用、活用していくべきかを論じた本だ。そして何より、本書はデジタル新時代を導く人間の手の大切さについて語った本である。

技術は無限の可能性を秘めているが、それがよいことに使われるか、悪いことに使われるかは、まったくもって人間次第だ。

機械が人間を乗っとるなどという戯言は忘れよう。

未来に何が起こるかは、私たちにかかっている。

以上が書籍『第五の権力』の序章です。
書籍の中では、より具体的に、世界で何が起こり、そして今後はどういう展開が「デジタル新時代」に待っているかについて語られています。
昨今の国際政治、経済、グーグルほかテクノロジー企業に関するニュースと照らし合わせて、今彼らにはどんな未来が見えているのか想像してみるのも面白いかもしれません。

HONZのレビューもあわせてどうぞ!
『第五の権力 Googleには見えている未来』by 出口 治明
『第五の権力 Googleには見えている未来』 - 拡張現実型の未来予測

エリック・シュミット(Eric Schmidt)
Google会長。1955年生まれ。2001年から2011年までGoogleの最高経営責任者(CEO)を務め、創設者のサーゲイ・ブリン、ラリー・ペイジとともにGoogleの技術や経営戦略を統括してきた。Google入社以前は、ノベルの会長兼CEOやサン・マイクロシステムズの最高技術責任者(CTO)を務めていた。それ以前は、ゼロックス Palo Alto Research Center(PARC)で研究員を務め、Bell Laboratoriesやザイログに勤務していた。プリンストン大学で電気工学学士号、カリフォルニア大学バークレー校でコンピュータ サイエンスの修士号と博士号を取得している。2006年には、全米工学アカデミーの会員に選出され、2007年には、アメリカ芸術科学アカデミーのフェローに就任。新アメリカ財団の理事会会長のほか、2008年からはプリンストン高等研究所の理事も務めている。

ジャレッド・コーエン(Jared Cohen)
GoogleのシンクタンクGoogle Ideas創設者兼ディレクター。1981年生まれ。史上最年少の24歳で米国国務省の政策企画部スタッフに採用され、2006年から2010年までコンドリーザ・ライス、ヒラリー・クリントン両国務長官の政策アドバイザーを務めていた。現在はCouncil on Foreign Relations(米国外交問題評議会)の非常勤シニア・フェローを務め、National Counterterrorism Center(国家テロ対策センター)所長諮問委員会のメンバーでもある。著書は、『Children of Jihad』『One Hundred Days of Silence』など(いずれも未邦訳)。2013年には、雑誌TIMEによって「世界で最も影響力がある100人」に選ばれた。

【訳者略歴】
櫻井祐子(さくらい・ゆうこ)
幼少期よりヨーロッパやオーストラリアなど、10年以上を海外で過ごす。雙葉学園、京都大学経済学部経済学科卒。大手都市銀行在籍中にオックスフォード大学で経営・哲学修士号を取得。東京在住、一女一男の母。
訳書は、『選択の科学』(文藝春秋)、『イノベーション・オブ・ライフ』(翔泳社)、『100年予測』『エッセンシャル版マイケル・ポーターの競争戦略』(早川書房)、『劣化国家』(東洋経済新報社)など多数。

第五の権力---Googleには見えている未来

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