石原都知事は東北大震災について「日本に対する天罰だ」と言い放って顰蹙を買った。あまり知られていないことだが、都知事は名古屋の減税党を引き合いにだしながら、財政破綻しつつある国であるにも関わらず、国民はまったく理解していない、それゆえに天罰が下ってもしかたがないと言っていたのだ。
『国債クラッシュ』は日本にその本物の天罰が下るプロセスを解説した本だ。すなわち国債暴落、株安、円安のトリプル安と日本の財政破綻である。前半は来年12月を想定したシミュレーション小説、後半はその解説である。著者の立ち位置はジャーナリストのそれであり、経済学者などとは一線を画す。
すなわち、国債の95%は日本人がもっているから大丈夫だという静的な分析をする立場ではなく、マーケット次第でいつでも暴落はありうるという、現実を直視した立場である。しかも著者は「マーケットには現実を正確に把握する力もなければ、結果を見通す眼力もない。マーケットには不安に駆られやすく臆病で、かつ利己的な心理があり、それに従った場当たり的な判断があるだけなのだ」という。
たしかに震災後の日本はきな臭くなってきた。この国はかなり危ないのではないかという感覚がある。資産や自身の逃避先を探しはじめた人も増えてきたように思える。このような感覚がマーケットと共有されると、財政破綻から国家の存亡という本物の危機がやってくるに違いない。
本書の経済学的な妥当性について評するつもりはないし、その必要もないと思う。3月11日以来、日本人の心に深く刻まれたのは、安全や安心を唱える国も学者もメディアも信用するにまったく値しないということだった。彼らが国民を騙しているというよりも、じつはまったく能力がなかったのだ。それゆえに、国民は自分で身を守るしかないということだ。国家の財政破綻は全国民に降りかかる大災厄だ。とりわけビジネスマンにとっては生死を分けることになる。最悪を想定して自分で備えをしておく必要がある。