『ハーバード白熱日本史教室』(新潮新書)の大ヒットが記憶に新しい北川智子さん。新鮮な講義メソッドやオリジナルな生き方に大きな注目が集まりました。昨年からはイギリスの名門ケンブリッジ大学の関連機関であるニーダム研究所に拠点を移し、エネルギッシュに研究活動を進めていますが、本書はアメリカからイギリスへと渡り、ヨーロッパを旅しながら考えたことをまとめた、初の書き下ろしエッセイです。
アムステルダム、ボン、パリ、ウィーン、ミラノ……。それぞれに歴史を持つヨーロッパ各都市を歩き、独特の視点で観察しながら、北川さんがかつて日本史研究に出会い、魅了され、そこに大きな未来を見出してきた過程の回顧がパラレルに描かれます。
「日本史は日本人だけのためのものではない」。人種のサラダボウルと呼ばれるアメリカで若い学生と日本史を学んできた北川さんにとって、それはたしかな実感でした。東アジア史の枠組みのなかでアメリカ人が語る日本史も、韓国人がカナダの大学で教える日本史も、みんなちがって、みんないいのではないか。いま日本史に必要なのは、そうした「異国のまなざし」なのではないか。グローバリズムとインターネットの影響で、世界が急速に小さくなりつつある現代において、ナショナル・ヒストリーはどうあるべきだろうか。本書はそんな大きなテーマに対する、小さな閃きとヒントたちが散りばめられたエッセイになっています。
『ハーバード白熱日本史教室』や『世界基準で夢をかなえる私の勉強法』(幻冬舎)で北川さんに関心をもった方や、北川さんがいま何を考えているのかを知りたい方に、ぜひ読んでほしい一冊です。
新潮社 出版企画部ノンフィクション編集部 菊池 亮
*「編集者の自腹ワンコイン広告」は各版元の編集者が自腹で500円を払って、自分が担当した本を紹介する「広告」コーナーです。