『書店員として、自分が出来ることは何だろう。もっと多くの方に本の力を伝えたい。そのためにはどうしたらいいのだろう』今回、HONZでのお話をいただけたとき、心から感謝しました。心の奥深くに諦めそうな私がいたからです。「まだやれることはある」と教えていただけた気がしました。精一杯伝えていきたいと思います。
時折、いつも同じ時間にいらしてくれるお客様の中には、『今日、何かあったのかな?』と感じる表情や歩き方をしている人がいます。店員という立場があるため、安易に声をかける訳には行きません。心の中で応援するくらいしか出来ないのです。
『俺は駄目じゃない』という本は、いつの間にか自分が流れの中心になってしまい、何故か理不尽な思いをしてしまう人に届けたいです。きっと、こちらの本を読んでいただけたら、少しはお客様が笑顔になってくださるのではないかと思いました。コミカルな表現が先に進むごとに癖になり「ぷふっ」と笑ってしまうのです。自分自身で「俺は駄目じゃない」と思えること程素敵なことはないように思います。
「今日発売だよね!?」と真っ先に飛び込んできたお客様がお求めだったのは、6月中旬に発売された『教場』。警察小説ミステリーであると共に、人間という存在を深く掘り下げた小説でもある作品。風間という教官が登場しますが、自分の人生の中で彼のような上司には出会ったことがありません。私にとって、この作品は、応援歌として響きました。
くじけない心を学んだ気がします。読むと勇気が湧きます。表紙をとると、デザイナーさんの遊び心があります。
「勇気」といえば、仕事をしていて、時に道が見えなくなる日があります。
先日、店内を掃除していて何か輝きを感じました。私の目に飛び込んできたのは、一冊の本。
『仕事のお守り』。全く予備知識なく装丁に惹かれて購入し読んだのですが、HONZの方も本を紹介していらっしゃるではないですか。驚きましたし、何だか縁を感じました。毎日の仕事終わりに、数ページ読み返し、前向きなエネルギーをもらっています。
本の勇気があっても、受け入れられなくなるときがあります。そんなとき、私は旅行に救われます。知らない世界を知ることで、凝り固まった心を解すことができるからです。
『FAMILY GYPSY』は高橋歩さんが、家族で世界一周しながら感じたこと、気づいたことを書き留めた旅ノートを本にしたものです。彼の言葉は写真と共に心に響きます。旅行に行けないときは、彼の本や世界遺産の写真集を見たりして、世界を感じようと試みていますが、やはり実際に身を置いたときの感覚は、大事な時間のように思います。接客によって誰かの心が笑顔になってもらいたいから。そのために、自分の心を笑顔に保ち続けたいと思うのです。
必死に生きている人は、自分がどんなに苦しくても笑顔で誰かを笑顔にしている気がします。
『大事なことほど小声でささやく』素晴らしい本です。一章一章反応せずにはいられない。胸が熱くなったり、泣き笑いになったり。どの人もいずれかの章で溢れる想いがあるはずです。全身全霊で受け止めたいと思える小説であり、人生の指針であるように思います。最後の章を読み終えたとき、「まいった」と呟いた程、森沢さんの想いが詰まった一冊だと思います。
本は人の心に寄り添い、その人が求めている何かを示唆してくれる存在だと信じています。今、悩んでいる人も笑顔いっぱいの人も、心に響く本と出逢えるご縁があるといいなと願っています。少しでも手助けできるとしたなら本望だと思っています。
来月も、こうして想いを伝えられる場があるということは、とても幸せだと思います。読んでくださってありがとうございました。
髙橋佐和子
1982年、AB型。埼玉県にて育つ。大手書店、街の書店を経て、2012年11月オープニングスタッフとして現書店で働く。地図ガイド・児童書・文庫のお手伝いをしているが、文芸をこよなく愛するアルバイト。本と同じくらい愛しているのは吐息が出るほどの美味しい日本酒。
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