採点:★★★★☆
分かり易い!!年金って何?もらえるの?得なの?どう改善すればいいの?と思っている人にはおススメ
現在の年金がどのような思想の基で設計・運営されているか、どのような問題点があるか、どのように改善すればよいかにQ&A方式で簡潔にまとめてある良書。このように複雑なシステムになってしまった原因である、作り手=官僚の理論も解説されている。しかし、何故このような意見がマスメディアから聞こえてこないんだ・・・
年金は本当にもらえるのか? (ちくま新書) (2010/07/07) 鈴木 亘 |
2010年の参議院選は民主党の大敗で幕を閉じたが、争点の「消費税」はあまり盛り上がるものではなかった。竹中平蔵さんの言うように、サッカーと相撲に完全に負けていた。本書のテーマである「年金」がテーマであった2007年の参議院選挙はもう少し盛り上がったような気がする。投票率は0.38ポイントのマイナス(ソース)なので、ほぼ変化なしではあるようだ。
本書を読んで、年金制度が無茶苦茶なのは「官僚がバカで無能」だからではなく、「官僚が持てる能力の全てを自らの利益(省益)の最大化のために使っている」からであるとつくづく感じた。
例えば、「マクロ経済スライド」「有限均衡方式」という言葉からその内容をイメージできる日本人は皆無だろう。なぜイチイチこんなややこしい名称をつけるのか。著者は官僚のごまかしでしかないと断じている。
不用意に易しい言葉を使ってしまっては、マスコミや国民が大騒ぎをし、ひょっとすると2004年の年金改正法案は廃案に追い込まれたかもしれません。(中略)厚生労働省の官僚たちが、不必要に制度を複雑化し、反対が出そうな改革には、マスコミや国民が関心を持たないように難しい言葉で「武装」するようになったのです
その他にも「100年安心プラン」が如何に数字合わせのお遊びでしかないかを数字の積み上げで証明する。JALの崩壊を描いた「腐った翼」を読んだときも思ったが、何故優秀で志が高い(であろう)人々が集まっているはずの組織がこんなことになってしまうのだろう。これはもはや官僚個々人を責めてもしかたないだろう。国家公務員法が1948年以来改正されていないことを見ても、その制度疲労が限界に来ていることは明らかだろう。
世代間格差やスウェーデンモデルを真似ることの愚かさはもちろん、最も基礎的な国民・共済・厚生年金の違いなども一通り理解できる。谷亮子にも是非読んで欲しい一冊だ。
~言及書籍~
腐った翼―JAL消滅への60年 (2010/06) 森 功 |