HONZ読者の皆様、こんにちは。本書は、『機動戦士ガンダム』の研究本です。
といっても、よくあるモビルスーツのスペック羅列本ではありません(そうした本であれば、皆様にご案内することはなかったでしょう)。『ガンダム』が描かれたキャンパス=「宇宙世紀」はあくまで素材。それを法学・政治学・経済学――といった社会科学を切り口に読みなおしてみると、何が見えてくるのか、というのが本書のテーマです。
たとえばジオン公国の国際法上の位置付けを検証し、ガンダムで描かれた戦いがテロなのか戦争なのか、学問的見地から検討する。あるいは、地球連邦軍に巣食う官僚主義に、戦後日本を重ねることで、連邦軍はもちろん、55年体制を、自民党を、さらに深く読み解く。さらに、劇中で敵方「ジオン公国」の総帥として登場する敵将ギレンの演説に、アメリカ民主主義の――もっといえばJ・F・ケネディの大統領就任演説の残響を聴きとり、国民を熱狂させるアジテーションの秘密を抽出する。そこには、良質のノンフィクションを読み進める時と同様の知的興奮があります。
難点は、じゃっかん読者を選んでしまうこと……。
まず、『ファーストガンダム』をご覧になっていることが必須です。ジオン好き、シャア好き、ブライト好きならなおよろし。さらに、リアル社会の近現代史や政治・経済に興味をお持ちなら鉄板です。自信を持って本書をオススメできます。
それ以外の方は……どうかガンダム好きのお友達に推薦していただけると幸いです。
最後になりましたが、本書は2005年に宝島社より刊行された単行本『宇宙世紀の政治経済学』を親本としています。blogやレビューで高い評価をいただき、このたび内容をアップデートすると
ともに(アベノミクスとジオン公国の関係にも言及!)、より手に取りやすい新書として刊行することになったものです。
さきほど無事校了しまして、店頭は5月10日の予定です。どうぞよろしくお願いします。
宝島社/浅野智明
*「編集者の自腹ワンコイン広告」は各版元の編集者が自腹で500円を払って、自分が担当した本を紹介する「広告」コーナーです。