夏休み用の本の紹介、第2陣である。まだ2-3週間ほども暑いそうだから Clic&Read で良い夏休みをどうぞ。
『群れのルール』
本書はすでに読了した。非常に面白かった。本年の経営学読み物ナンバーワンの第1候補である。生物学のパートも経営のケーススタディのパートも内容豊富で、じっくりと書きこまれている。土方奈美の翻訳も素晴らしい。ある月刊誌の書評でとりあげる予定なので、紹介はここまでにしておこう。これ一冊だけでも良い夏休みになるであろう。「即買い」推奨である。
『実録 江戸の悪党』
歌舞伎ファンであればの条件付きで「即買い」推奨だ。舞台の主役たち、田宮伊右衛門、河内山宗春、日本駄右衛門のモデルたちの実録が要領よくまとまられている。それ以外に直助権兵衛、白子屋お熊、鼠小僧、雲霧仁左衛門、由井正雪などなどの江戸の悪党たちがどんどん登場する。江戸時代を描いた小説を読む気力はないが、江戸時代にすこしだけタイムトリップしたい人におすすめだ。
『ゼロから始める都市型狩猟採集生活』
要するに東京の路上生活者のルポである。この人たちはかならずしも、訳知り顔のバラエティ報道番組が糾弾する「自由主義経済」の被害者ではなさそうなのだ。巨大都市は自然の生命力に溢れたジャングルのようだ。ひるがえって生きる意味を考えさせてくれる。間違いなくこれから話題になる本だと思う。本書もある雑誌の書評欄で取り上げる予定である。
『数になりたかった皇帝』
ともかくタイトルがすばらしい。店頭で手に取ってみない「本好き」はいないであろう。帯には「史上空前の帝国の君主は、なぜ自ら”数”となり、後継者にも”数”となることを命じたのか?」とある。もし「皇帝みずからが数になる」というだけの本であれば、牽強付会系素人研究者歴史本と認定してしまいそうだ。しかし、後継者まで含めているからこそ期待が持てる。とりあえず買ってみようと思う本だ。
『ミミズの話』
まだ目次しか読んでいない。その目次を眺めると「ミミズが語るパンゲア分裂」「ミミズの死骸はどこにある」「恐るべきセルフヒーリング」「ミミズはワサビが嫌い?」「巨大オレゴンミミズ」「巨大コンポスターの開発」「バイオソリッドの畝を」などなど、魅力に溢れた言葉が並んでいる。科学読み物ファンが目をそむけることができない一冊であろう。ダーウィンの生涯最後の研究テーマはミミズだった。
『音楽嗜好症』
本書のタイトルもヤバい。脳神経学と音楽に興味のある人にとっての「ゴキブリホイホイ」だ。ただし、かなりびっしりと書かれている本なので、読了までには時間がかかることが予想される。突発性音楽嗜好症、音楽誘発性癲癇、蝸牛失音楽症、音楽サヴァン症候群、共感覚、音楽とトゥレット症候群、パーキンソン病と音楽、音楽と狂気と憂鬱、ウィリアムズ症候群、認知症と音楽療法などなど、このゴキブリハウスには目もくらむような餌がばら撒いてある。
『「裏」を見通す技術」
元警視庁捜査第1課刑事が書いた本だ。副題は「刑事のマル秘情報収集法」とある。立ち読みで買ってしまった。「今日は息子の誕生日なのに、取り調べで家に帰れないことを容疑者にそれとなく知らせ、同情をかって「落とす」ところ」を読んでしまったのだ。クサすぎる。そんなことあるわけないじゃないか。なので買ったのである。夏休みの刑事物語である。
『ヒトはどうして死ぬのか』
ざっと見た感じではアポトーシスに関する入門書のように見える。しかし、アポビオーシスについても触れているようだし、単なる入門書では終わらない印象をもったので買ってみた。この類の本は読んでみなければわからない。全ての分野の入門書にレベルがある。入門1から入門5まで、それぞれ1冊を効率よく読むことができればベストだ。本書がアポビオーシスの入門2くらいだったらうれしい。アポトーシスについては入門5じゃないと困る。
『飢えたピラニアと泳いでみた』
副題は「へんであぶない生きもの紀行」この類の本も読んでみなければわからない。経験上、針小棒大系、あまりに異常系、だらだら記述系、などが容易に想像できる。幼稚園のときにジュールベルヌにハマったお爺さん探検家、小学生のときにコナンドイルにハマったオジさん研究者、中学生のときにダイアン・フォッシーにハマった自然ライターのどれかだ。ちなみに著者は3番目である。
『ロストシティZ』
20%まで読んだのだが、どうしても臨場感が得られない。アマゾン探検の本であり、夏休みに最適だと思ったのだ。ブラッド・ピットが映画権取得して主演・プロデュースをするという物語のネタ本だ。帯には「探検市場、最大の謎を追え」とある。けれどもなかなかアマゾンの真ん中にいる気分になれないのだ。文章が上手すぎるのだ。あらゆることを手際よく説明できる能力があるため、なんでもかんでも説明し尽くしながら物語が進み、そこには驚きも恐怖もない。超絶技巧をもつピアニストが、かなずしも人気があるわけでないのと同様だ。とはいえアマゾンファンは必携だ。
『サクセス‐鉄くずはロマン』
出版社は牧歌舎だから、ほぼ間違いなく自費出版である。自費出版本まで買い漁るとは自分でも呆れるのだが、じつはこの本かなり面白い。住友商事で鉄スクラップを取り扱い、米国企業にヘッドハントされ、海千山千の業界で生き抜いていく。現在68歳。自らを「世界1の鉄屑マン」と言い切る。もちろん著者には会ったこともないが、相当カッコ良いビジネスマンだ。鉄屑の写真がキレイである。本の作りもじつに丁寧。カバー裏まで凝っているのは自費出版の証であろうか。虚心坦懐に本と向き合うと出会える本である。